ん……
何だ……
俺は、身体を襲う荒い痛みに目を覚ました。
薄く目を開けて見てみると、どこかで見た事のあるような女の子が、俺の身体を縛る縄を
解いていた。確か、この子は――
「にゃあ。お姉さん、解けそうですか?」
「ん……多分……」
黒い髪。田舎っぽい顔立ち。そして何より、この触角……
(理緒ちゃんか)
チャンスだ。
こいつはとっぽい上に、俺に惚れているはず。こいつと、もう一人いるらしいバカ女を始末して
持っている武器を奪えば、生き延びるチャンスが出てくる。
例のメス女と乳くせぇガキのせいでふざけた目に遭ったが、やはり危機と好機は交互に訪れるもんだ。
「……解けた! 藤田くん、大丈夫!?」
理緒が縄を放り、俺の頬を叩く。だが、ここではまだ目覚めない。どうせこのおめでたい女の事だ。
俺が気絶した振りをしていれば、負ぶって連れていこうとするだろう。
その時、首を絞め落とし……もう一人のガキを叩き殺せばいい。
俺がそんな事を考えていると、理緒は困ったような調子で、
「心臓は動いてるから、生きてるよね……仕方ない、おんぶしてあげよう」
「にゃあ。お姉さん優しいです」
(来たァ〜〜〜)
俺はかすかに口元をほころばせた。身体じゅうの力を抜き、理緒にされるがままに負ぶさる。
「サンキュー」
俺はぐいっ、と理緒の首を固めた。
「きゃ!?」
後はこのまま動転して、何もできないままくたばるだけ……
「えいです!」
ぴ!
「!?」
身体を駆け抜ける刺激、直後に硬直。俺はのけぞり、理緒の背から落ちた。
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