Lost Joker(アナザー)
月島瑠璃子(060番)は新藤沙織と塚本千紗から奪った
二枚のCDを手にして新たな獲物を探して歩いていた。
CDを全部集めたら逢いに行くからね長瀬ちゃん。
だって私は長瀬ちゃんを助けるために「ジョーカー」になったんだから。
くすくす、そのためにはみんな殺しちゃわないとね?長瀬ちゃん。
沙織ちゃんも瑞穂ちゃんも香奈子ちゃんも兄さんも……。
空想の中の少年に語りかける。
民家の前を横切ったとき後ろで気配がした。
バスバスバスバスバスッ!!!
何かが発射される音がした。その音に誘われるように後ろを
振り返ったと同時に眉間に何かがめり込む感触がした。
………あ……私、死ぬ…の…か…な?
くすくす、それもいいかもね。私が長瀬ちゃんのために
人を殺したって知ったら…長瀬ちゃん………怒る、きっと。
……長瀬ちゃん優しいから。
どさりと仰向けに倒れる。びくんびくんと身体が痙攣させながら
──結界のせいで電波を使えないことは知っていた、でも…それでも──
彼との絆を確かめたくて彼女は電波を使った。
今日はよく晴れてるからもしかしたら届くかもしれない。彼女はそう信じた。
自分を撃った相手が止めをさそうと近づいてくる。
狂気のためだけではないうつろな目で空を見ながら、口元に笑みを
浮かべ、人生最後の言葉を声にならない声でつぶやいた。
「長瀬ちゃん……電波…届いた?」
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