裏切り・前編


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「昔からあんたは何でも一人でやろうとしてたわね、たまには姉さんを頼りなさい。」
「あなた、誰?リアンを知ってるの?」
「私の名前はスフィーよ、リアンの姉で人呼んで『グエンディーナ一番のマジカルガール』参上!」
「まじかる、がある…」
「なによその目は、でもリアンを助けてくれててありがとね。さて、妹が命張ってるんだから
ちゃっちゃとやっちゃいましょうか。」

と、スフィーはリアンへのバリアを維持しながら芹香と綾香、それに舞の体を次々の回復させていった
さすがに三人を回復させるのは骨だったのだろうか、終わるころには足取りも重く顔色を青くさせていた。

「結界の力もだいぶ弱っているわね、っていっても完全に回復できなくてごめんね。
こっちもレベル1まで縮んじゃったわ。もう胸がすかすか。」
「……。」
「そうね、姉さん。自分の身を削っているとはいえこの結界の中でこれだけの魔法、力強い味方よ。」
「もう私の魔力も残り少ないけどなんとかなるでしょ。じゃあいくよ!」

リアンのほうも顔面蒼白になっている、リアンと結界のどちらの終わりが早いのだろう
四人が再びリアンの周りを固めようとしたときに、のんきな声が聞こえてきた。

「あらあら、そうはいきませんよ。」

と同時に鋭く風を切る音、綾香ですら反応できなかった瞬きほどの時間の後に

「きゃあぁぁぁ!」

スフィーの首に十字架が生えていた。

スフィーの細い首に突き立ったものは十字架ではなかった。十字に鋭い刃のついた鉄の塊
手裏剣だった。

「やっと魔法使いさんが二人とも登場してくれたわ。これでこっちから探さなくてもいいわね。」
「!牧村さん!あなたいったい何してるの!」
「ごめんなさいね、高野のおじい様達から貸し出された神奈はとっても貴重なの、だから
壊されないようにここに近づくものは私が何とかするという訳よ。」

出会った時からのやさしげな微笑を崩さずに南はそう言った、スフィーが大きな血の塊を
数回吐き出したかと思うと地面に崩れ落ちそのまま動かなくなる。

「来栖川姉妹とグエンディーナの魔法使い、共に危険度ランクBね。まあ数が集まれば脅威
っていうだけだからこんなものでしょうね。」
「……!」

とっさに芹香が飛ばした電光をあっさりかわして南はまた手裏剣を放つ。それは舞と綾香に向けられたが
二人は何とか身をひねり自分たちの命を奪おうとする鉄の固まりをかわした

「やっぱり一番強力な人を先に倒すのは王道ですね、登場したばかりでかわいそうだけど
スフィーちゃんにはそのまま退場してもらいました。」
「人の命をおもちゃみたいに、許さない!」

南に向けて走り出した綾香に光の弾が襲いかかった、光は足にあたり綾香はその場に転倒する。

「あらあら、神奈はまだ解放されていませんよ、よそ見は危ないです。」
「!!」
「ほら、リアンちゃんを守っているのが二人になってとっても苦労しているわ、早く楽にして
あげなくちゃいけませんね。」

と南はリアン達三人に向かって手裏剣を投げる、セリアがとっさにリアンをかばいその身に
手裏剣を受けた、舞の竹槍にも数本の手裏剣が刺さっている。

「あら、お姉さんだけでしたか、残念。」
「よくも姉さんを!!」
「そろそろ芹香さんも退場してください。ごきげんよう。」

南の手裏剣は狙いたがわず芹香の眉間に突き立った、双子の姉妹が倒れたのは奇しくもほぼ同時
だった。もはや舞一人ではリアンは守りきれない、舞は何度もその体に光の打撃を受けながらも
リアンを必死に抱きかかえ神奈の暴走の直撃からかばっている。
意外なところから銃声が聞こえたのはそのときだった。

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