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鮮烈! 虎の男現る


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「……殺してよ」
「ばかみた――」


「 愚 か 者 ぉ っ !! 」


 バキィッ!
「ぷろぁっ!」
 私の傍を掠めるように、一陣の風が吹き抜けた。鈍い音がして、観月さんの身体が二十メートルほど吹っ飛ぶ。
「なっ……なっ……!?」
 土ぼこりにまみれ、半ば吹き飛んだ惰性で顔を起こす観月さんに、突如現れたその人物はツカツカと歩み寄って行った。
「な、なんか変な人だよぉ……」
「そうね……ちょっと変な人ね……」
「変な人ではない!!」
 筋骨隆々とした身体に漆黒のマントを羽織り、そして――虎の顔を持つその男は言った。
「私の名はタイガージョー!!」
「い……いきなり殴りつけておいて、なに自己紹介なんかして――」


「 人 の 話 は 黙 っ て 聞 け !! 」


 ゴキャッ!
「えぅろぱっ!」
 再び――恐らくさっきもそうだったのだろう、今度は視認できた――タイガージョーの鉄拳が観月さんの頬にめり込む。
 ほぼ正確に前回と同じ飛距離をマークし、ちょうど自分たちの目の前に帰って来た観月さんに私は、おかえり、と声をかけた。
 完全に地面に突っ伏してしまい、意識があるのか判別のできない状態だったが、そんな観月さんに構わずタイガージョーは言葉を紡ぐ。
「殺して、と言ったな」
「言った……わよ……それがどうかしたの……」
 地面の下から声がした。意識はあるみたいだ。
「どうかしたの、ではない! よくもそんなことが言えるものだ! 死んで行った者たちに申し訳がないと思わんのか!」
「…………」
「お前に、いや生きとし生けるものには誰にも自分の生死をどうこうぬかす権利などない!
 ただ這いつくばってでも最後まで、辛かろうが苦しかろうが生き抜く、それ以外の選択肢など断じてない!」
「……あなたに何がわかるって言――」


「 ま だ わ か ら ん の か ぁ !! 」


 SMAAAAAAAAAAAAAAAAAASH!!
「らりぶっ!」
「死んだわね」
「死んだねぇ」

「いいか!」
 小石が水を切るように跳ねていく観月さんをもはや追うこともせず、タイガージョーは腕を組み、淡々と続けた。
「お前はそれでいいかもしれん。だが、お前を産み育てた両親はどう思うのだろうな」
 遠目にも、観月さんの背中がビクッと動いたのがわかった。単に痙攣しているのかもしれないけど。
「必死に働いてお前を養ってきた父親は! 腹を痛めて産み、これまで育ててきた母親は!
 お前が今しがた簡単に自らの生を放棄しようとしたのを知ったらどう思うだろうな!」
「……パパ……ママ……」
 観月さんがよろよろと力無く立ち上がる。
 霧島さんが横で小さく「わ、生きてた」と言ったのを私は聞き逃さなかった。
「どんなに苦しい思いをしていようと、お前の親は必ずお前に生きていて欲しがっている。
 今死んでしまうということは、疲れ切って帰って来たお前を抱き締めて喜ぶ権利をお前の親から奪ってしまう、ということなのだぞ」
「……ありがとう、タイガージョー」
 ゆっくりと、ゆっくりとボロボロの身体を引き摺るようにして観月さんがこちらに歩いてくる。
 観月さんが目の前までやってくると、タイガージョーは観月さんの頭にポン、と手を置いた。
「わかってくれて何よりだ。……だが実際問題として、お前はこの島で生き残るには余りにも無力だ。これを持っていろ」
 そう言ったタイガージョーの手には何やら棒のようなものが握られていた。
 観月さんは恐る恐るといった感じでそれを受け取る。
「タイガースティックだ。万一の時にはきっとお前の役に立つことだろう」
「……ねぇ、タイガージョー。どうして私に親切にしてくれるの?」
 観月さんがタイガージョーの顔を見上げる。心なしか、目が潤んでいるように見えた。
「あなたの声、聞き覚えがあるわ。そうでしょ? あなたは――」
「さらばだ! 少女よ、必ず生き残れ!」
 そしてまた風が舞い――気がつくと虎頭の男はその場から姿を消していた。
 しばらくの間立ち尽くしていた私たちだったが、やがて観月さんが呆けたように呟いた。
「さよなら……タイガージョー」


【次回、虎の覆面美少女戦士!その名は……!?】

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