黒船来襲(観鈴パート)


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 少し時間は戻る。
 神尾晴子と桜井あさひが2人でこの場から離れて数分が過ぎたときのことだった。
 神尾観鈴は相変わらず花輪製作作業を続けていた。
 そのとき、
「ワオ! なにこれー! きれー。すごくきれいな花がたくさん咲いてるヨー! ワンダフル! 素晴らしいネ! ビューティフル! これぞ、お花畑に、サクラ咲くってヤツね! もずくとは比べ物にならないほどきれいヨ! みてよみてよ、ジュン!」

 本物のマシンガンよりもうるさいと思えるマシンガントークが、近づいてきた。

「んー、シロツメ草もたくさん生えてるな、ついでに、潤ちゃんのマメ知識からいわせて貰えば、シロツメ草の花言葉といえば、「感化」だ。タンポポは「愛の神託」だ」
それがどうしたって言われたら、どうでもないんだけどな。
「ともかく、そんなのどうでもいいよ! タンポポきれいね! タンポポ! すばらしい、ホントウにスバラシイよ!」
 そういってヤンキーは草むらをごろごろ猫みたいに転がりだした。
「たんぽぽと、シロツメ草と戯れるヤンキーか。これはこれでいいのかもしれない」
 そう思ってみていたら、ヤンキーの後ろに何かがいた。
 ヤンキーとは少し違うけど、近い色の髪をした、少女だった。
 これが、運命の出会いってヤツかもしれん。ともかくにこやかに、なおかつニヒルに話し掛けてみようじゃないか。片手を軽やかに上にあげ、スキップで北川は観鈴の方に寄っていった。
「やぁ、こねこちゃん! 一緒に遊ばないかい?(そこで花と戯れているヤンキーは放って置いて)」
「おかあさんといっしょなら……」
「おかあさんといっしょか! そうか! 僕はポロリが好きなんだ、君は?」
「じゃじゃ丸」
 観鈴はそう即答した。
「で、なんでおかあさんと一緒なのかな? ん?」
「おかあさん今、ちょっとあっちにいってるの、私帰ってくるの待ってるの」
 勘違いだったか、あのお母さんと一緒だと思ったのに。これなら話題豊富だったのに!
伊達に、NHK教育番組ラヴァーだったわけじゃないのに。

北川は心底残念そうだった。

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