僕の決意が狂気で彩られてしまわない内に〜長瀬祐介〜


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――俺にできることは、ここまでだ。あとは、自分で考えて、自分で決めろ――

叔父の言葉。
それがたぶん、僕がこの道を選ぶことになった決意の言葉。

――……それが、お前の答えか?――

そう、それが僕の答え。
叔父を、許せない、許されない…そんなことじゃない。
ただ、自分の心を満たすための行動だ。
僕が狂ってしまわないうちに…というのもある。

すべて、僕が自分で考えて、自分で決めた行動だ。

ただの、盟約だ。

――俺の、罪だからな。いつかは、ケリをつけなきゃならん罪だったからな――

違う。叔父さんが悪いわけじゃない。たぶん、みんなだ。
人は誰でも狂える。そして、狂っているともいえる。ただそれに気づかないだけだ。
理性という名の檻で、ただそれを封じ込めているだけ。
あるいは、狂気という名の力の使い方を知らないだけ。
誰でも、誰だって、人は心に狂気の扉を隠し持っているんだ。

  これはただの盟約さ。

人は死ぬ?…ああ、死ぬさ。これからもこの島ではね。
狂気なんて誰だって持っているから。
食うために殺す…ではなく、娯楽ために殺すことのできる、人間という動物ならば誰だって。



僕はここにいさえすれば安全かもね、ここへは誰も入ってこないんだから。
――だけど、僕は自分の意志でここを出る。
これから、狂ってしまっても、人を殺しても、そして死んでしまうかもしれないとしても…
それでも、すべてから逃げることは絶対に許されないことだ。どんなことよりも。
だから、僕はここを出る。


僕は叔父さんを殺す。自分の心を満たす為だけに。
自分の手で決着をつけたいんだ。この長瀬の血にね。
もしも、僕がすべてが終わっても生きていたとしたら…
僕もきちんと幕引きするよ。自分の意志でね。


――お前は、泥をすすってでも生き延びろ。たとえ、つらくても…な。
  身勝手かも知れないが、それが――俺の願いだからな――


それはたぶん、叶うことはもう二度とない。


僕は、建物に、火をつける。
決して、逃げ込まないように――逃げてしまわないように。

  結局、僕は弱いままだったね――瑠璃子さん。

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