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さむけ。前編


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ベッドの上には、真っ赤な血がこびり付いていた。
粉々に割れた硝子の破片が、ベッドの周りに閑散と広がっている。

思わず声を上げそうになったが――わたし、観月マナは、なんとか、耐えた。
耕一さんを呼びに行こうと――そう思ったわたしを止めたのは、不思議な恐怖感と、好奇心だった。
「わたしは頭脳明晰なキューティ女子高生だ! このくらいの事件一人で解決してみせる!」

取り敢えず仮説を出す。考えられるのは一人しかいない、と思う。
「犯人は七瀬(男)さんだ! そもそもなんであんなに唐突に飛び出したのか納得いかなかったけど、
 葉子さんを誤って殺してしまったのだと考えれば辻褄が合う気もする!
 それにナイフを持っているのは彰さんだけだから!」

……だめだ、それじゃあこの血の乾き具合を考えるとおかしい。
わたしの天才的頭脳と聖先生から習った医療術を統合して考えると、彼女は死んでから、少なくとも三時間は経っている!
あれ? おかしいぞ? 数時間前と云えばここにいたのは、彼女を治療していた自分だけではないか!
「わたしを、犯人です」
馬鹿な! いくらわたしといえど、自分のやった事には責任を持っているわ! 二股なんてかけないもの!
待て? 考えてみれば、七瀬(漢)さんや晴香さんが、ここに帰ってきてから彼女の看病をしていた筈だ。
その時に、別に彼女の身体に異変があった事など告げられなかった!
「どういう事――?」
考えても疑問が解決しない。
馬鹿な! わたしは天才美少女観月マナだぞ! 泣き言は言わない!

さて――
わたしは慎重に葉子さんに近付く。
そして、そこに屈み、葉子さんの視界に自分を近づけ――部屋を眺め回してみる。
風が弱々しく吹き込んでくる。窓が粉々に割れている、と言う事は、
外部からの侵入者があった、と考えるべきなのだろうか?
しかし、わたしとてミステリオタクの端くれだ。麻耶雄嵩と山口雅也を語らせたら右に出るものはいまい。
これがダミーである可能性をまず考えなければいけない。ベッドの上には、真っ赤な血がこびり付いていた。
粉々に割れた硝子の破片が、ベッドの周りに閑散と広がっている。

だが、不自然ではないだろうか。
何故そう思うかって?
それは、外部からの衝撃で飛び散った割には――
硝子の破片が”少ない”と言う事だ。

わたしは割れた破片を一つ、手に取ってみる。
――やはりだ。
なにか粘着質のものが、指に触れた。
そして、わたしは自分の記憶の片隅にあった
部屋の片隅に、ガムテープがあった事を。
そして、記憶通りの場所にそれはあった。
しかし、犯人はわたしの記憶力を舐めきっていた。
ガムテープの量が、ずいぶんと減っている。

つまり、こういう事だ。
内部から侵入した犯人は、まず眠っている葉子さんを刺し殺した。
そして、犯行がガムテープを窓の全面に張って、そして、内側から叩き割った。
ガムテープでそれはくっつくので、派手な音は立たない。
そして、割れた破片を、それからはがしたわけだ。
面倒な作業だろうが、ともかくガラス片をはがして、そいでそれを部屋の内側にまき散らした。
当然ガラス片全部をはがし切れるわけがないから、ガムテープに張り付いている分のガラス片は、
犯人は持ち去るしかなかったわけだ。
だからガラス片の量が少ないのだ。数えてみればきっと判る。

わたしは葉子さんが割と安らかな表情になった頃から、部屋に一度も入らなかった。
ちょうどそのくらいの時に七瀬(漢)さん達が帰ってきて、看病を替わってくれたからなのだが。
つまり、それからの時間帯の内に、葉子さんは殺されたと言う事なのだ。
わたしが確認する限り、葉子さんの部屋に入った可能性があるのは五人だ。

耕一さん、七瀬(漢)さん、晴香さん、月代ちゃん、そして、蝉丸さん。

しかし、月代にもそれ程時間はなかった。ずっとわたしと出歯亀してたわけだし。
七瀬(男)さんと初音ちゃんは――うん、たぶん、無理だと思う。
流石に、ねえ……

それに、わたしは血の問題をどうすればいいのだろう?
数時間前には、血など流れるはずはなかったのだから。
五人の内、誰が殺した?

――不可解な葉子の死! 一体誰が彼女を殺したのだろうか?
――そして、謎の血痕! いつの間に血は流れたのだろうか?
――そして、動機の謎! 何故葉子を殺す必要があったのだ?
――極限状況での人間達の狂気を描く、サイコホラー……!
――美少女名探偵観月マナの導き出す結論が、衝撃の結末をもたらす――!

――のでしょうか?

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