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Stand By Me


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廻り出した首飾りも止まり、発光も止まった。しかし全員の顔色は悪い。
この部屋に居る全員が感じているのだ、迫り来る危険を。

――足音が聞こえる、希望の砦を踏み壊す破壊の足音が――

部屋に転がり込むように彰が入って来て倒れこんだ、体は血塗れだ。
最初に反応したのは初音、すぐに駆け寄ろうとしたがその血塗れの体を見て体が竦んでいる。
次に反応できたのはマナ、すぐさま彰の体の怪我の具合を調べる。
「大丈夫、この血は彰君の血じゃないは。」
その言葉を聞いてやっと全員が動き出した。
「すぐにこの診療所から逃げろ、敵だ。」
(耕一さんの事を初音ちゃんにばれたら……)
耕一を殺したのは間違っていないと思う、しかしあんなクズの性で初音ちゃんに嫌われるわけには行かなかった。

「敵って、耕一さんはどうしたんだよ?それにその血はどうしたんだ?」
「この血は返り血だ、耕一さんとは別々に逃げてきた。それよりもさっさと逃げるんだ。」
「逃げろって何処に行けって言うんだよ?」
「お前達、それぞれ自分の目的があるだろうが!ここは俺が食い止めるからさっさと逃げろ。」
「だけど……」
「出発するわよ北川。」
「スフィーお前納得できるのかよ、もしかしたら耕一さんが今襲われてるかも知れないんだぞ。」
「そんな事言われなくても分かってるわよ!でも私達は目的を優先しなきゃならないのよ。」
スフィーは全員に向って言った。
「私達はみんなで脱出できるように少しでも可能性のあることを逃がしちゃダメなのよ。
 CDの事を貴方以外の誰がするって言うの?
 神奈の事を私以外の誰がするって言うの?
 その為にも今は泥水啜ってでも生きなきゃいけないの。」

――相手に言い聞かせるようにそして自分に言い聞かせるように――

「貴方は私から結花を奪った罪を背負って生きていきなさい。死ぬなんて絶対許さない。
 どれだけ苦しくても辛くても生きて自分の罪を償いなさい。そうしないと私は絶対貴方を許さない。
 絶対に生きるのよ……私も……私も貴方からレミィさんを奪った罪を背負って生きていくから。」

――心の底から咆えた、この島の悲しみを打ち砕こうと足掻く者の叫びを――

それぞれが自分の目的を見つめなおした。
CDを発動させる、不可視の力を制御する方法を見つける、この島の人たちに生きる希望を与える
全員が荷物をまとめ出発するかと思われた、しかし……

――全員に叫びが届いたわけではなかった――

「私は残る。」

――みんなが自分に注目しているのは分かる、でも私は気が付いてしまったから――
「私の目的は彰お兄ちゃんと一緒にこの島を脱出する事。だから彰お兄ちゃんから離れない。」
――もはや叶わない夢かも知れない、でも諦める事なんて出来ない――
「だから私はココに残るの。」
――誰もが納得できない顔をしている。私もまだ納得できたわけじゃないもん――


みんなが出て行った。『あるはずのない』敵を警戒しながら。
――もしも私の考えが当たっていたら――
「彰お兄ちゃん、話があるんでしょ?」
「は……初音ちゃん何の事だい?」
――否定して欲しかった。無理だと思いつつも信じずにはいられなかった――
「その血……耕一お兄ちゃんのでしょ?」

ばれた……全てばれた。今更ながら自分のしてきた事が頭を駆け巡る。
確かに耕一は初音ちゃんのことを好きだったかも知れない。
初音ちゃんだって嫌がってた、でも家族として愛していなかったのだろうか?
そういえば耕一さんは千鶴さんという女性がいるって言っていたのに。
あのキスも恋人としてのキスだったのか、ただのスキンシップじゃなかったのか?

初音の一言が引き金になった。あとは少し不安を増長させてやるだけだ。
(彰を少しの間乗っ取れればいい、時間がたてば復活するだろう。その前に鬼の力を回復して理性を叩き潰す。)

鬼の作戦はついに成功した、確かにこのとき彰の理性は自ら体の主導権を譲った。
そしてそれと同時に彰の顔も禍禍しく邪悪な笑みを浮かべる。
「最初から気がついてたみたいだな。」
「私だって鬼よ、その血が耕一お兄ちゃんのだって分かっちゃったわ。」

――現実はいつでも残酷である。



「残念ながらお前の大好きな彰お兄ちゃんは俺の中でお休み中だぜ。」
さも愉快そうに彰お兄ちゃんが話している。でも『勘違い』してる。
「私の大好きな彰お兄ちゃんは目の前にいるわ。ただ鬼の血で隠れていた部分が見えてるだけ。
 何時もの彰お兄ちゃんも今の彰お兄ちゃんも私には変わらないわ。」
彰お兄ちゃんが困惑している。こんな所に面影が残ってる。

最初は鬼になった時自分の手で決着つもりだった。でも目の前で大切な人は確かに生きている。
それを自分の手で消すほど初音は強くなかった。
それに確かに彰の面影は残っている、もしかしたら元に戻せるチャンスもあるかもしれない。
どこか辻褄の合わない考え、愛が人を盲目にさせる性かも知れない。

「私は貴方の為にこの血を捧げたのよ。私は貴方と生きるためにココに残ったの。」
彰お兄ちゃんが震えている、私の真意に気がついたようだ。
「お前は俺と歩むつもりなのか?」
――彼が堕ちるというのなら私も一緒に堕ちよう――
「私は貴方の花嫁、私の体は貴方の物、私の血は貴方の物、私の心は貴方の物、私の……」
最後まで言い終わる前に私は押し倒された。

荒々しい痛みを含んだ愛撫、それは歪んだ愛の生んだ一つの結末。
人の道をはずれる決意をした者の儀式。

――たとえ家族でも私の邪魔はさせない、私は彼を生かすために最大限の行動をしよう――
私は痛みの中で決意した。
――私は貴方の側に居続ける。だから私を側において――


【鬼 初音の血を摂取して力をかなり回復】
【鬼が初音を受け入れるか殺すかは次の書き手任せ】
【彰の理性は休眠してるだけで復活は十分考えられます】

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