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人として


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「…あなたが神奈なの?」
私はそう言ってゆっくりと自分を取り戻していった。
再び顔の筋肉は引き締まり、唇はきっと結ばれて、体に力が入っていく。
そして長年の仇を見るような目で見た。
今、話している相手がこの殺人ゲームの原因なのだ。

私は、はっ、と我に返った。
目の前に小石が迫っていた。
投擲を、私は必死に地面を転がるようにしてよけた、もちろんCDを大切に抱えながら。
「…ふん、つまらん」
神奈は冷笑を浮かべた。
「いったい、余をどうしようというのじゃ?」
距離はあるが、言葉は良く聞こえた、その問いに、私は体勢を立て直しながら言った。
「そんなの、決まっているじゃない。お姫様が悪者を倒しにきたのよ!」

しゃべっている間、私はCDをいつ使うか迷っていた。
おそらくチャンスは一回きりだろう。
なるべくなら神奈の本拠地である祠にいって発動させたかった。
その時、神奈の笑い声が聞こえた。
「ははは! 笑わせるわ、妹も助けられないお姫様など!」


目の前が、暗くなった。
私はその場にへたりこんだ、自分で言ったあのセリフが頭の中に響く。
-----妹がピンチのときに駆けつけない姉なんていないのよ。

その様子を見た神奈は、一瞬だけつまらなそうな顔をして、羽の光と共に消えていった。

そして、私は忘れようとしていた約束を思い出した、あれは10年前ぐらいのことだった。


真夜中、何だか小さなすすり泣きの声がして、私は目が覚めた。
目をこらして見てみると、隣で寝ていたリアンが半身を起こし、シクシク泣いていた。
「どうしたの、リアン?」
心配になり、小さく声をかけてみた、良くみると顔には幾筋もの、涙のあとが光っている。
「わかった、お腹すいちゃったんでしょ? だめだよ、ちゃんとたべなきゃ? 調理場から盗んできたパン、食べ…」
そこまで言うと、急にリアンは私に抱きついた。頭を押し付けしがみついてきた。
「だって、だって…姉さんがいなくなる夢、見ちゃったんだもん…」
かすれ声でそんなことを言うリアンを、私はやさしく抱きしめた。
彼女の前では頼れる姉でいたかったから。

「ばかね、いなくなるわけないでしょ?」
「…うん、だけど…」
「わかった、約束してあげる。」
「…え?」
「私はリアンの前からいなくならないし、ピンチの時には必ず駆けつけてあげる」
「本当! 姉さん?」
「うん、だから指きり」
「うん!」

しかし、実際はこの有様だ。リアンは死に、私はおめおめと生き残っている。
何が姉だろう、何が次期王だろう、結局は妹一人も救えないじゃない!
ただの約束破りじゃない!


…でもごめんね、私はそれでも生きるよ。今動かなきゃ世界中の人々、そしてこのゲームで生き残っているみんなの命が危ないんだ。
この島でいろんな人にあって、いろんな人と別れたよ。
人を殺す人、殺さない人、なんとか生き残ろうとする人、どうしようもなく不器用だけどくじけず前に向かう人。
いい人ばかりじゃないけど、悪い人ばかりでもなかったよ。
お姉ちゃんはここでこれ以上人が死んでほしくないんだ、生きていってほしいんだ。
あなたを殺した人もいるかもしれないのにね。
ごめんね。

勝手なこととは、解かっている。こんな自分が嫌いだ。
…でも私は動くしかなかった、全てをなげたすことが出来なかった。
どうしても残っている人達を見捨てることができない。
そういえばリアンはこんな性格の私をほめてくれたっけ。
「姉さんのそういうところに王の資質があるんだよ」って。


「でも、けじめはつけるよ、ここには針千本ないから」
私は約束した方の左手の小指を口の中に入れた。
「指、切るね」

「うりゅ…痛いね…」
私は祠へ向かって歩き始めた。
指は痛い。
でもその痛さが現実なのだ。

【スフィー 左手の小指切断】

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