闇の中、独り
……闇が続いている。
暗く、そして昏い闇が。
ここは安息の場所。
何もかもなくした私が見つけ出した、最後の場所。
それでも、知っていた。
永遠なんてないことを。
所詮、この暗黒も一時の窪みでしかないことを。
それでも、もし、できるなら。
このまま止まっていたかった。
心を、凍り付かせていたかった。
ただひたすらに静かに、私と私の周りの空間を取り巻いている暗黒の静寂に、
すべてを任せていたかった。
寄る辺無き魂の孤独を癒してくれる人など、どこにもいない。
私の心、そのままに――。
「……何よ。いいじゃない、私が独りでいたって――」
嘘だ。
独りなんて嫌だ。
だって、温もりを知ってしまったから。
あの少年と出会ってしまったから。
彼女たちと出会ってしまったから。
でも、どうすることもできない。
私は、独り。
何もかも無くした、迷い猫。
それでも、私は”私”でありつづけることを求めた。
たとえそれが虚構でも。
MINMESでお膳立てされた、悲しい夢想でも。
だって、そこにしか私が私でいられるところは無いのだから。
月。
私の、最後になるはすの敵。
……だったもの。
私はそれを成し遂げた。
もう、なにもすることは無い。
なのになぜ、ここに留まっているの?
……分からない。
”月”を殺すことで、私は何かに変わったのだろうか。
――いや。
何かに変わることができたのだろうか?
(殺してしまえばいいじゃない)
(壊してしまえばいいじゃない)
(力を振るえばいいじゃない)
(こんなに気持ちいいことを、どうしてやらずにいれるの)
(ほら、あの時みたくやってしまいなさいよ)
呪詛が、聞こえる。
私の心の内からにじみ出る、”私”自身への呪詛。
「……なによ……ドッペルゲンガーの分際で……私に……指図しないで……」
私は何にも従わない。
私はFARGOにも従わない。
私は”月”にも従わない。
私は”私”にも従わない。
私は何にも従わない。
――私は、葉子さんとは違う。
ヂ――――――――――ッ、ヂャッ!
フラッシュ・バック。
「――不可視の力とは、邪な力」
「自分の正の意志とは相対する意志を持った力」
「自分の願いに反し、作動する力」
「――力が私を喰らうとでも言うの? そんなことどうでもいいわ」
「だが所詮それは淡い木漏れ日」
「翼に厭われ、儚く零れた雫」
「それは如何様にも人の手に在らざるもの」
「どうでもいいわ、私があなたを殺すことには変わりないもの」
「聞け、子よ」
ガ―――――――――――――ッ、ガッ!
「静穏に溺れ、願いを持ったことの報い」
「故に求めた力すら、傀儡に過ぎぬ」
「お前が、壊したのだ」
ジッ。
「――綺麗ね、この花。あなたには勿体無いくらい」
「力に意味なんていらない」
「殺すんだから」
「――故にお前は、自らの手で母親を殺したのだよ」
プツッ。
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