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「なんだか面倒なことになってきやがったぜ……」
藪の暗がりの中で気だるそうに御堂(089)が呟く。

本来強化兵である御堂にとって、こんな企画は問題ではなかった。
その気になれば、あの場にいる全員を相手にしても負けない自信もあった。
(といっても、蝉丸ら他の強化兵もいたので一筋縄ではいかなそうだが)

だが、ここに来てから何故か強化兵としての超感覚が上手く働かない。
そう、あの最初の犠牲者――御影すばるとかいう女――が殺されるずっと前から。

恐らくは他の強化兵にもそれは及んでいるのだろう。

(正義感の強い蝉丸あたりがあの場を黙って見過ごすはずがないからな……)

「正義感……反吐が出る言葉だぜ。」
御堂は自分に支給されたバックを忌々しそうに眺めた。


本来、人間であった頃から銃の名手として名を馳せた御堂、
いや、銃だけでない。当時(推定約50年前)に考えられたであろう武器のすべてに精通し
使いこなしてきたといっても過言ではない。

支給された武器が銃に越したことはない。しかし、たとえ鉛筆が武器であったとしても
常人には負ける気はしなかった。
そう、強化兵としての力が使えなくてもだ。

御堂に支給された武器…いや、武器であろう物体は人懐っこそうにこちらを窺っては
大きなあくびを繰り返していた。

「な〜ご〜」
猫の声。御堂は再び舌を鳴らした。
口のまわりや耳などは茶毛ではあるが、白い猫。
「俺ぁ黒い猫が好きなんだよ…」
おまけに支給されていた水や簡易食も既に食い散らかされていた。
「武器にもなりゃしねぇ…どこぞでは既にドンパチやらかしてるってのによ…
情けねぇにもほどがあるぜ……」

割と近くない位置で銃声が響いたのはまだ少し前のこと。
少なくとも重火器を手にした参加者がいるということだ。

「にゃあ」
「にゃあじゃねぇよ…殺すぞこのくそ猫。」
御堂はこれからのことを考えていた。
武器がなくとも白兵戦なら身一つでできる。
倒した奴から武器を奪い取って戦う……
これが御堂のシナリオだった。
「このクソ猫はどうするか……」
いつの間にかそのクソ猫は御堂の頭の上へと移動していた。
猫を連れては隠密行動もできない。百害あって一利無しだ。
「殺すか…」
御堂の目が殺気を放つ。

普通、動物は相手の気に敏感なものだが、この猫は少したりとも動揺しなかった。
それどころか頭の上で丸くなってうにゃぁとか鳴いてる始末だ。
「お前飼い猫か?そんなことじゃどの道長生きはできねぇなぁ。
……いや、お前にも使い道はあるか。」

「それこそ囮や偵察(偵察は無理だろ……)に活躍してもらうとするか。武器にされるぐらいだ。
それなりの訓練はされてんだろ?」
脅すような御堂の口調にも猫は間の抜けた声をあげるだけだった。

「ちっ、もう行動するぞ。……自分の足で歩けよな。」
「なぁ〜ご」
「……けっ好きにしやがれ!コキ使ってやるからな……聞いてんのかおいっ…!!」

一人と一匹は緑の生い茂る林道の奥へと消えた。
殺戮という名のゲームへと参加するために……

ぴろが仲間に加わった!!

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