放送が切れ、周囲に静けさが戻る。
その内容は、浩平、瑞佳、七瀬の三人に大きな衝撃を与えていた。
「……うそだろ、おい」
死んだ人間の中には、自分の知り合いが既に3人も入っている。
ゲーム開始から、多分まだ、そんなに時間はたっていない。
それなのに、3人。
誰だかわからぬ殺人者に強い怒りが沸き上がる。
先輩は目が見えないんだぞ? なんで殺されなきゃいけないんだ。
澪だってあんな性格の女の子だ。他人に危害を加えたりするはずないじゃないか。
それなのに……それなのに……っ
だが次に広瀬のことを思う。
あいつはあの性格だ、多分誰かとやりあったんだろう。
仕方ないかもしれない。
そして、誤解から住井をも殺そうとした、自分。
そうだ、これはデス・ゲームだ。
殺人者のやっていることは、ゲーム内では「正しい」。
結構じゃないか……だったら俺も……やってやる。
先輩や澪を殺した奴をぶっ殺し、障害になる奴全員、ぶっ殺してやる!
強く握った拳からは、爪が肌に食い込み、血が流れていた。
強くかんだ唇からも、歯が食い込んで、血が流れた。
黒い思いに取付かれた浩平を、
「ダメだよ、浩平……」
瑞佳は後ろから、優しく抱き締めた。
「長森――」
「ダメだよ。
確かに、誰かを――殺さないと」
自分の口から出た「殺す」という言葉の大きさに、瑞佳は一瞬言葉を切らした。
気持ちをおちつかせ、続ける。
「殺さないといけないかもしれないけど。
それでも、怒りにまかせてそんなことしちゃ、だめだよ。
浩平には、そんな風になって欲しくないよ。
そんな浩平、嫌だよ……」
殺されたくなかった。
それ以上に、殺したくなかった。
どうして簡単に人を殺せるんだろう。
わたしを助けてくれた住井は、人を殺したのに、笑っていた。
怖かった。
どうして、あんな風に笑えるのだろう。
それがわからなかった。
綺麗事だとわかっていても、人間らしくありたかった。
そんな浩平でいてほしかった。
冷たい空気の中で、浩平は瑞佳の暖かさを背中に感じていた。
瑞佳の思いが伝わってくる。黒い思いが、消え去っていく。
(そうだ。俺がそんなことでどうする。
俺は、『守るため』殺すんだ。
どうしても殺さざる得ない時だけ、その時だけ、どこまでも冷徹になればいい。
そうだ。笑って人を殺すような奴に、なっちゃいけない)
「悪い、ごめんな、長森?」
腕をほどき、振り向く。
「うんっ」
瑞佳は、泣いていた。