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(畜生まだ死ねねえ、俺はまだ殺したりねえんだ)
浩之が目を覚ましたときにはもう辺りはすっかり暗くなっていた。
「気がついたようだな、結構危なかったんだぞ」
浩之は全身傷だらけであったがその全てに治療が施されていた。
「一つ聞きたい、あんた何で俺を助けた?」
「私は医者だ。人は殺したくないのだよ。たとえこんな状況でもな、
だが私も死にたくは無いのでね、武器は全部とりあげさせてもらった」
見るとボウガンもナイフも浩之の手の届かないところに置いてあった。
「そういえばもう一人いたはずだが姿がみえないな」
「ああ、観月君なら水を汲みに行ってる、すぐに戻ってくるさ」
それを聞いた浩之は突然土下座した。
「こんな異常な状況とはいえ問答無用で殺そうとした俺を
助けてくれるなんてあんたなんて善人なんだ、俺が悪かった
許してくれ!」
そう言って何度も何度も頭を下げる。冷静にみれば台詞も行動も
やけに大仰で芝居がかっていたのだが聖は気がつかなかった。
「おい止せ、傷口がまた開くぞ、それに私とて医者でなければ
君を助けなかったぞ」
「いややっぱりあんたいい人間だ、お礼に楽に死なせてやるぜ!」
「なにを……」
浩之は言い終わるや否や体を起こし、土下座したとき手に握りこんだ
砂混じりの小石を聖の顔面めがけて投げつける。聖が怯んだ隙に置いて
あったナイフに手を伸ばす。ナイフをつかむと体を伸び上がらせその反動を使って
ナイフを持った腕をふるい、聖の喉を真横から一文字に切り裂いた。傷口がわずかの
間、白く鮮やかに見える。続いてそこから血が迸ってくる。
 聖は出血を止めようと本能的に両手で傷口を押さえる。
「佳乃、お姉ちゃんまでいなくなってごめ……」
聖はそこで意識を失い、口からも血を吐きながら崩れ落ちていった。

そこに浩之にいままで忘れていた痛みが戻ってくる。
「くっ……!!」
「今の体調じゃ二人はやれなかったな。俺は運がいいぜ」
「そうそうあんた妹がいるんだってな、寂しくないよう
すぐそっちに送るぜ。じゃあな、名前もしらない女医さんよ」
 そう言い捨て浩之は歩き出す、次なる獲物を求めて。
 その時突然浩之の心に声が聞こえた。
(浩之ちゃん、どうしてそんなことするの?あの優しかった
浩之ちゃん、どこにいっちゃったの?)
 その声は浩之がこの世で一番見知っているが見知らぬ少女の姿をしていた。
(うるせえ、どうしておまえが俺の心にいるんだ、さっさと出ていけ
出ていかないと殺すぞ!だいたいおまえは誰だ?)
(本当にわたしまでいなくなっていいの?浩之ちゃん)
いいに決まってる。そのはずだ。しかし何故かその言葉が言えなかった。
 浩之は体ではなく心が何故か痛かった。しかしどうして痛むのかもう
解らなかった。

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