継ぐ者
「つ……」
応急処置――と言っても、傷口を消毒して包帯を見様見真似で巻いただけだが――を終えたマナは、
浩之の武器を積めこんで重くなったディパックに聖の応急処置セットをしまい込むと、よろよろと立ちあがる。
つま先を地面にニ、三度打ちつけて感触を確かめる。――大丈夫。これなら歩ける。
「じゃ、霧島センセイ、私行くね。もし、妹さんに会えたらここに連れて来るから。約束する」
マナは、冷たくなった聖の方を向かずにそう語りかける。聖の姿を再び見たら、また泣いてしまいそうだったから。
「それと、センセイの応急処置セットとメス借りていくね」
声が震えるのを必死で抑えて、マナはそこまで言うと、未だ意識を取り戻さない浩之の方へ歩み寄る。
「……すっごく憎いけど、私は医者の助手だから無抵抗の相手を殺したりは……しないわ」
意識を失ってる浩之を見下しながら、マナは冷たく言い放つ。
「その代わり、しばらく大人しくしていてもらうけどね」
ふん、とマナは鼻をならす。見れば浩之は、両手両足を縛り付けられてる。
武器没収と身動きを封じること。それが、医者の助手であるマナに出来る、精一杯の報復だった。
「じゃあね。しばらくそこで自分のやったことを反省しなさい。……改心したって、許してあげないけど」
そういうと、マナはまだ痛む足を引きずるように歩き出す。――さぁ、行こう。
お姉ちゃんや、藤井さんと会うために。霧島センセイの妹さんと会うために。
風が、マナを後押しするように優しく吹きぬけた。