この孤島、脱出不可能


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もうすぐ夜が明ける……
「うーん、だ〜めだぁ、ここもコンクリで固定されちゃってるよ……」
芳賀玲子が地面に身体を擦りつけながらぼやく。
「みたいですね。」
誰も通らないような細い路地。
アスファルト舗装された地面のマンホールを見つけては、それを開封しようと奔走していた。
柏木楓があきらめたように息を吐き出す。
「別の方法を考えたほうがよさそうですね。」
「うーん、地下道からなら脱出経路が確保できると思ったんだけどなぁ〜。」
「仕方ないです。目の付け所は悪くないと思いますし。」
「え、そぉ?照れるわよ、にゃはは。」
得意げに玲子。
「伊達に滋養強壮漫画は読んでないわよ☆」
(どんなマンガですか…)
「そうだ、漫画といえば…本よ!楓ちゃん、さっきの本、見せてくれない?」
「本…武器支給のですか?…民明書房ですよ。」
「いや、ほら、もしかしたらどこかにアンダーラインとか引っ張られてたり…」
「……?」
「あー、だからぁ、何の意味も無いような本にあえて何かのヒントが隠されてたりするかもしれないでしょ?
もしかしたらあいつらがわざと何かを仕込んでるかもしれないし!」
「なるほど、そういうことなら…」
ガサゴソ……かばんの中身を漁りはじめる。
「ありました。」
楓からその本を受け取ると、適当にページを開いて目を通す。
「暗くて読みにくいわ…えーと、なになに……?…撲針具……」
玲子は真剣に内容と睨めっこしはじめる。
(私、忘れられてませんか?)
朝日が昇り始めるまで、玲子は本を読むことをやめることはなかった。

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