一つの終焉
めきめきっ…!
また一つの木がなぎ倒され、麗子の姿が露になる。
弥生が再び散弾銃を麗子に…
ドン!
別方向からライフルが火を吹く。そして同時に鋭い風の音――
弥生は木の陰から顔を出すことすらできなかった。
「……」
弥生は短時間の激闘にてかなり疲弊していた。
まだ生死をやりとりした戦闘は2回目。
しかも今度は本格的、しかも二人だ。
幸い相手も素人なのか、未だに被弾はない。
次弾装填しながら、深呼吸。
クールだった彼女の顔にはいつもでは考えられないほどの感情が浮かんでいた。
それは由綺でさえも知ることはない。
「なんでこんなっ…!」
ボウガンに次の矢を装填。
ストック残り1本。今のを入れて2本だ。麗子には信じられなかった。
そう、最初に眼鏡の女を仕留められなかったときから感じていた小さな違和感。
(狙ったはずの矢が…当たらない!)
再び向こうの木々の暗い闇からライフルの光――。
「――っう。」
柔らかい斜面を転がる。今の衝撃で、木の破片が麗子の横腹の柔らかいところに突き刺さる。
「この私が、なんてこと…」
最初に気付くべきだった。この島の結界とやらは、麗子の身体を確実に蝕んでいた。
(私の身体に干渉してくるなんて…バカだわ。)
舌打ちしながら深山雪見がいるであろう方向に身体を回転させる。
斜面を転がりながらそのまま、一連の動作を一呼吸で終える。
(ラスト…1発!!)
再び横から爆音の嵐――。
(やばっ!)
散弾銃が麗子の足をかすめ、あたりに血を撒き散らした。