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告白と決意と…


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「ところでマルチ。」
「はいっ?」
智子は、ずっと疑問に思っていたことを問いかけた。
「あんた、あかりを助けた時、木の上に登っとったやろ。」
「はいー。そうです。」
「…なんで、あんな所におったんや。」
えーと。という仕草で思いだそうとする。
「じつは、怖かったので、出発してすぐ目の前にあった林に隠れてたんです。」
「ふんふん。」
「でも、それじゃあ見つかっちゃいやすいので。木の上に登ったんです。」
「そーかー。よく登れたなー。」
「はい。うまく登れるまで3時間かかりましたー」
「…よく殺されんかったわ、こいつ」
…マルチが来てから、ため息をつくことがめっきり多くなった気がする智子だった。

それと、もう一つ気づいたことを、今度は晴香に問いかける。
「なあ、晴香。」
「どうしたの?」
「いや、今気づいてんけどな、奴らが乗ってたジープあるやん。あれ、使えへんかな。」
昨日、智子達を襲った兵士。彼らは軍用ジープに乗ってやって来ていた。
「使うって…乗って行くってこと?」
「や、それもあるけど…もしかして、あの中に何か手がかりがあるかもしれんなー思て。高槻の。」
「…そうね。でも、あの場所に戻るのって危険じゃない?」
もともと出発地点の一つであった所だ。警戒されているかもしれない。
なにより晴香達は、あそこで兵士を倒している。
「どうやろ。でもあそこにウチらが戻ってくるゆうんは、
 さすがに向こうは考えてないんちゃうんかな。」
「…そうね。行ってみる?」
「うん。そやな。」

廃墟と化した公民館跡。
それを臨む林の中に、晴香達はいた。
「だあれも、おらんな。」
「そうね。近づいてみる?」
「うん。…マルチ。」
「はいっ!」
呼ばれて、ぴんっ!と背筋をのばす。
「ちょっとの間、神岸さんと一緒にここにおって。ウチらで見てくるから。」
「はいっ。わかりましたっ!」


兵士たちの乗っていたジープに近づいてみた。
危険はなさそうなので、中の物を探ってみる。
「どや?」
「地図があるわね。やつらの拠点がいくつか書かれてる。…それと」
「なに?」
「いや、この無線、使えるのかしら。」
備え付けられてある無線機。壊れてはいないはずだ。
「それはちょっとヤバいんちゃうん?」
ぴーっ!
突然、無線機が音を発する。
二人、頷きあい、スイッチを押してみた。
「貴様ら、なにしてる!早く205中継基地へ来い。
 高槻殿がいらっしゃる前に来ないと、厳しく処罰されるぞ。わかったな!」
ぴーっつ!

「…どう思う?」
「ワナかもしれない。」
「うーん、難しいとこやね。」
「でも…」
「うん。行ってみよ。手がかりは今んとこ、これしかないんやしな。」

205中継基地。
その入り口で、兵士たちが慌しく動いている。

それを臨む丘の上。ジープを止め、様子を覗う晴香達。
「どうする?」
「高槻が来たら、中央突破して奴に詰め寄り、人質にする。これしかないやろ。」
あまり利口とはいえない作戦である。
「…無謀ね。」
「無謀結構やん。どのみちウチらは、地獄のデス・ゲームに放り
 込まれとるんや。なにもせんかったら殺されるだけ。
 万が一でも、みんなで生き残れる方法があるんやったら
 それに賭けてみるだけや。せやろ?」
「…そうね。」
たのもしいわね。と眼鏡の少女の言葉に思う。

「マルチ!」
言いながら、智子は後部座席を振り返る。
「今回はあんたにも、出番がぎょうさんあるで。頑張りや。」
「はいっ。がんばりますぅ!」
「それと」
晴香に向きなおり、言う。
「ちょっと時間もらえるか? …神岸さんに話があるんや。」

あかりと二人で。ジープを降り、丘を下る。
背の高い植物が生い茂る湿地。
晴香達に話を聞かれない場所であることを確認し、
智子は、言葉をかけた。

「神岸さん」
「……。」
あかりは、俯いたままだ。
「…あんた、気づいてるんやろ。藤田君のこと。」
「ひろゆき…ちゃん…。」
その悲しげな呟きに、智子も俯く。
「初めから、なんか妙やなー思うててん。」
…身体を翻し、あかりに背を向け、言葉を続ける。
「ウチら、出発地点同じやったろ。わたしの前に藤田君が出てったとき、
 …あー、多分藤田君は神岸さんと一緒に行くんやろなーって。」
表情を消したまま、あかりはじっと聞いている。
「で、次にわたしがあそこを出た時、もう藤田君はおらんかった。
 せやから、きっと神岸さんのことが心配で、だーっと急いで
 行きよったんやなーって、そう思とった。」
「……。」
「けど、わたしが悲鳴に気づいて、引き返して行ったときには、
 ………。晴香が、戦うてる所やった。」
その情景を思い出し、天を仰ぐ。
さらに智子はつづける。
「この前、神戸の同級生がおったて言うたやろ。あれ、ウソや。」
その言葉に、はっ、と顔を上げるあかり。
「あんた、わかってたんやろうけど。藤田君やったんや。」

  …藤田君、無事やったんやね…
  …ああ。おかげさまで…
  …でも、もうお別れだ…
  …生き残るのは、この俺だけでいい…

「あのとき、ああ、この人はゲームに乗ってしもたんやねぇって。
 でも、なんでか。ああ、藤田君らしいかもって、思ってしもてん。」
ふりかえり、自嘲ぎみの笑みを浮かべる。
「なんでやろな。…なんで、そないな薄情なこと、思たんやろな。」
「……。」
なにも言えないあかりは、唇をかみ締め、感情を押し殺そうとする。

一歩、あかりに近づく。
「なぁ、神岸さん。あんたのこと、あかりって呼んでもええか?」
「えっ?」
思わず顔を上げる。そして智子と視線が合う。
「一蓮托生でここまで来たんや。もう、友達やろ?」
「…うん。」
「なら、名前で呼びたい。晴香ばっかり名前で呼んでるんは不公平や。そやろ?」
智子のやさしい笑顔。あかりは思わず目に涙が浮かべる。
「うん。」
迷いなく返事を返す。
「なら、わたしのことも智子って呼んで。ええな。」
「智子…。」
「せや。わたしはあかりを守る。たぶん晴香もそう思うてる。
 まず高槻見つけて、どうかしてこのゲームをやめさせる方法見つけてから、
 それから…藤田君に会いに行こう。」
「…でも!」
あふれる涙。ぎゅっと拳を握る
「…たぶんな、あかりに会えば藤田君も改心するんやないか思うんや。甘い考えやろけど。」
智子は視線をまた空に向け、何かを見据えるようにして。
「なんとか説得して、みんなで帰るんや。平凡で退屈やったけど、幸せやった、あの日常に。」
視線をあかりに戻す。
「な、帰ろう。いっしょに。」
「…っつ!」
駆け寄り、智子に抱きつくあかり。
その頭を優しくなでながら、
「そうやろ…藤田君。」

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