現実


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和樹は自分が少しずつだが自分の考えが絶望へと傾いていくことを
感じずにはいられなかった。
行けども行けども死体しか発見できない。
そして正午の放送が追い討ちをかける・・・・・・千紗ちゃんが死んでいた。
瑞希、大志、由宇、郁美ちゃん、千紗ちゃん
こみパの仲間たちが次々と消えていく、たとえ助かったってもうあの日々は帰ってこない。
自分のすぐ隣でクスクスと笑い声が聞こえる
・・・・・・?、詠美?
「あはははっ、わかったわよ、ぽちぃ〜、これは全部夢!夢なのよう。」
「きっと、朝起きたら、いつものベットであたシはお魚にエサをあゲて、それかラがッコ行って
 原稿カいて、こみパでしたぼくがいっパい待っていて・・・・なのにどうして目が覚めないのぉ〜。」
「夢じゃ・・・・・ないんだ、俺たちは今ここで、殺し合いをしているんだ・・・・」
「うそぉ、パンダいルんでしょう!、ほらハリセン持って出てキなさいよ、ほうら出てこないわよ!
 アイツがいない時点で夢なのよ。」
「詠美・・・・由宇はもう死んだ。」
「あははハはは〜ほぅらやッパり夢〜ぽちがそンな酷い事あたシに言ウわけ無いもの」
・・・・・・・・・・狂い行く詠美を見ているうちに、和樹の心の奥底に秘めていた
今まで必死で押さえつけ、殺してきた感情が溢れ出していった。
もう、止められない。

「目を覚ませ!詠美、俺だって、俺だってこれが夢ならどれだけ良かったと何度思ったか・・・・だけど現実なんだよぉ
 瑞希も大志も由宇も郁美ちゃんも千紗ちゃんも皆死んだんだ!!、夢じゃないんだ!!
 夢じゃないんだよぉ〜〜〜〜!」
「帰りたい、帰りたいよぉ〜〜またこみパに行きたいよう〜でも、でももう誰もいないんだぁ。」
「死にたくない、死にたくないよう、でもでも怖いんだよぉ・・・・・どうすりゃいいんだよぉ
 誰か教えてくれ!大志ぃ、瑞希ぃ。」
いつのまにか和樹は詠美のひざの上で泣きじゃくっていた、そして詠美の瞳からは狂気の熱は消え
意志の光が戻っていた。
「ごめんね、かずきも辛かったんだね・・ごめんね、ごめんね、あたし助けられてばっかりで
 あたし1人だけ楽になろうとして・・・・逃げたりして。」
「もう大丈夫だから、あたしもう大丈夫だから、現実から眼をそむけたりしないから・・・・だから和樹も泣かないでよ。」
詠美は力いっぱい和樹の体を抱きしめる。
「怖いなら・・・・ずっとこうしてあげるよ・・・・それとも瑞希さんじゃないとダメ?」
「え・・・いみ」

そして2人はごくごく自然にお互いの肌を重ね合わせ、男女の行為へと及んでいった。
今こうしている間にも誰かが死んで、もしかしたら自分たちが殺されるのかもしれない。
それでも、たった1つくらいは肯定できる現実が・・・・・絆が欲しかった。
生き残るための支えが。

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