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そして、わたしに過酷な日々を。


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『……096深山雪見……』
 それは、突然始まった。第五回目の定時放送。
 空に、高槻の顔が投影される。それは、嘲るような表情で、島を見下ろしていた。
『……さて、もうすぐ半分だな。本来ならもっと早くに到達すると思っていたのだが』
 そこで一旦区切ると、高槻は顔を歪ませて吐き捨てるように言う。
『どうやらお前等の中に、未だに甘い考えを持つ者が多過ぎるようだ。
生憎、俺はお前等の反吐が出るような偽善者ごっこに付き合ってる暇は無い』
 そして、にやりと笑う。
『そこで、このゲームのルールを再認識して貰うためにこちら側が手を貸すことにした』

『今から五分やる。その間に、現在二人以上で行動している奴はそいつと別れて単独行動を取れ。
もし、五分経っても一緒に行動しているグループがいたら、そいつ等は死んでもらう。
言うまでも無く、これは殺し合いだ。最後の一人になるまで続けられる。
足手まといがいるなら、殺せ。共通の目的がある者は、殺し合え。
それが、このゲームの本来の姿だ』
 歪んだ笑みを浮かべて、話し続ける高槻。
『さあ、せいぜい別れて逃げるが良い。おっと、面倒なら隣の奴を殺しても良いぞ。
そっちの方が効率的だしな。はっはっはっ……』
 高槻の高笑いが響き、そして映像が掻き消える。それを合図に、島のあちらこちらがざわめき始めた。

 そして。――五分が、経った。

 再び高槻の顔が空に投影される。何かを確かめるような仕種を見せると、苦々しげに呟く。
『……ほう。まだ理解していない愚か者がいるな――おっと、理解しないから愚か者なのか』
 そして、再び何かを確かめる仕種をして、にやりと笑った。
『ふむ、神尾晴子と神尾観鈴の両名は未だ一緒に居るようだな。
ルールを無視して徒党を組んでいる奴等の中で、積極的に殺し合いに参加しないお前たちは必要無い。
――さぁ。見せしめに、死んで貰おうか?』

『さあ、せいぜい別れて逃げるが良い。おっと、面倒なら隣の奴を殺しても良いぞ。
そっちの方が効率的だしな。はっはっはっ……』
 その放送に、あさひはパニックになっていた。
「ど、どどどどどうしましょう!?」
「……落ち着きい」
「は、はは早く別れないとっ! みんな爆弾が爆発しちゃいますよっ!?」
「だから、落ち着きいって。……あのな、ウチはここから動かんことに決めた」
「え?」
 その晴子の意外な言葉に、あさひはきょとんとする。
「だから、あんた、早よう行きい」
「え、えええ……。でも、でもっ!」
「いいから。あんたまで巻き込むわけにはいかんからな。ほれ、しっしっ!」
 晴子は手を振って、あさひを追い払おうとする。あさひは、しばらく困惑したまま
どうしようか思案していたのだが、ごめんなさい、と一言呟くと晴子たちに向かって言う。
「あのっ、あのあのっ。……絶対、また会いましょうねっ!」
「ああ、そやな」
 そしてあさひは踵を返し、とたとたと走り出す。それを見送りながら、晴子はぽつりと呟く。
「もっとも、次に会うときは天国やな。そん時は、また観鈴と仲良うやってや……」
 そして、晴子は苦笑いを浮かべる。
「……ウチは、地獄行きやろうから、もう会えへんけどな」

「すまんな、観鈴」
 晴子は観鈴をぎゅっと抱きしめると、そう話し掛ける。
「本当は生き延びるために別れなあかんのにな。せやけどウチ、もう観鈴と離れとうない」
「……お母さん」
「観鈴。……お母さんはな、ワガママやねん。だから、観鈴の意志は聞かへん。
ウチは観鈴が人に殺されるのも、人を殺すのも見とうない」
「……」
 晴子は観鈴の髪を優しく撫でながら続ける。
「だから、一緒にいよ。お母さんな、観鈴と最後まで一緒にいたいんや」
「……うん。わたしも、お母さんと一緒にいたい」
「そっか。ありがとな、観鈴」
「うん」

 そして。――五分が、経った。

『――さぁ。見せしめに、死んで貰おうか?』

『おうおう。感動的な母子の絆と言うものか?』
 高槻が忌々しげに吐き出す。
『ふん。……お前等も見ておけ。ルールに従わなかった愚か者の辿る末路を』
 と、高槻の顔が掻き消え、代わりに抱き合っている母子の姿が映し出される。
それに気付いた母子が空を見上げ――母が叫ぶ。
『あんたっ! ウチらはあんたの思い通りにはならん! 絶対に、もう離れ離れにならんからな!』
『……ほう。一緒に死ぬと?』
 どこからか、高槻の声がする。
『あんたのような下衆の言いなりにはならん。何もかも思い通りになると思うな、このドアホッ!』
『そこの娘はどうだ? 生きたいなら、その母親を殺して、他の奴を殺して最後の一人に残れ。
そうすれば、生きて帰れるぞ』
 晴子が観鈴の方を振り向く。観鈴は、虚空をじっと見詰め、そして呟いた。
『わたしは』
 そして目を伏せる。
『わたしは、お母さんと一緒の方が、いい』
『……観鈴』
 安堵の表情を浮かべ、そして振り向きざま言い放つ晴子。
『どや! あんたの思い通りにはならんちゅうたろ! わかった



 どん、と音がした。



 崩れ落ちる女性。
 それを目を見開き、只見つめるしかなかった少女。
『……ぃゃ……ぃや……いやああああああああああああっ!』
 絶叫が響く。
『言っただろ。見せしめに殺す、って。お前の希望通り――おっと、叶えられんかったな。
すまないが、一人で死んでくれ。ああ、それから娘には殺し合いに参加してもらうからな。
頑張って一人でも多く殺せるように願っておいてやれ。フ、フハハハハハハ……』
 狂ったような高槻の笑い声が響く。そして未だ絶叫止まぬ観鈴に言う。
『おいおい。泣いてる暇は無いぞ? お前もこれからは一人で殺し合って貰うんだからな。
さ、母親の死体から武器でも漁れ』
 観鈴は聞かない。狂ったように叫び続ける。――と、その映像が掻き消えて、再び高槻の顔が投影された。
『ふん。――さて、これでわかったろう? お前等の命など俺の気次第でどうにでもなることを。
わかったら殺し合え。最後の一人になるまでな』
 そして、高槻の顔が掻き消える。
『取り敢えず、今、二人以上でいる奴等には、制裁を加えずにいてやる。
感謝しろよ、この俺と、犠牲になったあの女に。くはははは……』

 夜が来る。――絶望の夜が。

023 神尾晴子 死亡
【残り 50人】

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