源三郎は考えていた。
どうもこの島に来てから調子が悪い。
私はもっと飄々と仕事をこなせたはずなんですがねぇ…。
老の時といい、今回といい、ちょっとお喋りもすぎますしねぇ…。
多重ドラッグなんてやっていれば思考に影響がでるのはあたりまえだ。しかし実際影響がでてる中の源三郎には、そんなこと思いつきもしなかった。
そこに警視庁の敏腕刑事だった面影はない。
(しかし困るんですよねぇ。イレギュラーは…。
やはり物事というものはルールにのっとってきっちりとやらなければ…)
そこにあるのは狂人的な執着。
ことの始まりは源四郎であった。
ルールを無視して島におりるとは何事か。
あんたも参加者(月代)を撃っただろうが…。
そんな突っ込みが、心の檻に閉じ込められた『源三郎』から放たれる。
しかし源三郎には届かない。
源四郎はあきらかなイレギュラー。処分して当然。
(しかしもっとイレギュラーがいたもんですねぇ…)
その後発見した千鶴。
初めに見たときは目を疑った。
そうか。爆弾除去で死を偽装したか。なかなかどうして、私並の狸だな。
『源三郎』は素直に感心した。
だが源三郎は納得しない。自分が命をかけて老=イレギュラーを排したのに、このまますませるわけにはいかない。
おいおい。脱出も賭けの対象だろ? これは手段のうちだよ。
そんな理屈。源三郎に届くわけもなかった。
身体の状態など、目的のためには些細な問題だった。
さてさて。残るイレギュラーはあと2つ。
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