独白


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あの時。どうしてあんな事を言ってしまったのだろう。
どうして、黙って引き金を引けなかったのだろう。
(優等生的解答。あなたは私と違うから)
本当の事はわかっているから、二重に嘘を仕込む。
待っていよう。二人の帰りを。

もし、帰ってこなかったら? 怪我の様子からすれば、充分にあり得る事だ。
その時は…どこに居場所が残っている?
初音は、居場所を失ったという少女の事を想う。
ああなるしか、無い。
それに混じる嘘。それは、本心だから。

この銃を握る。狙うのは、ここで倒れている少女。
「何をする気?!」
「こうすれば…動かさなくて良い!早く耕一お兄ちゃんと彰お兄…彰さんを助けに行くの!
大切な人は絶対死なせたくない!」
「止めなさい!」
「じゃあ、行かせてくれるの?」
「でも葉子さんを置いては行けないでしょ」
二重の嘘に頼る。出来る限り、緊張を見せないよう。冷静に、冷静に。
「同じ事を言う必要は無いわ。学校で私に向かってきた人は覚えているでしょ」
もし、止めに来たら?その時は誰であっても…撃てないのに。

「なら、一旦昨日のところに戻って医薬品を確保してからにしましょう。急ぐわよ」
急いで往復すれば、葉子がどこかへ行く事とも無い。
ただ、もっとあっさりと医薬品は手に入った。小さな名医と共に。

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