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――友里の手記に拠る【後日】


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その日もいつものように私は高槻の部屋の前に来ていた。
と言うより高槻は私に”犬”たることを求めたのだろうか。
従順で、忠実な犬。
まったく、わがままな男――。

「……ん、ちゅぷっ」

座ったままで私をひざまずかせ、高槻はフェラを強要している。
何か裏づけのある余裕の表情が常に浮かんでいる。
下衆なやつだと思うけど……この点については何か恐れを催すものもある。

丹念に袋をマッサージしていたせいか、もう竿は天井高くそそりあがっている。
あまり激しくなく、薄く舌を這わせてより敏感にさせるのだ。

普段なら、それで時間が食いつぶされているところだった。
だが、今日は違った――。

「――高尚な趣味だな」
「何だ、混ざりたいのか?」
「不要だ」

……部屋の中に男がもう一人。
黒服。
その男は気配を消してそこにいた。

「……島への輸送のことだ」
「それなら既に手を打った。すくなくともあの”神奈”に反応する状態だけは
 回避している」
「実験は……成功したと言えるのか?」
「そんなことは知らん。俺としては厄介払いが出来るだけで十分だ。
 あんな”怪物”は側においておいて何の得にもならん。
 反逆されるのが落ちだ」
「……達観しているな。というより思考に節操がある。流石に消耗品とは違うか――」
「……ふん、この様子についての皮肉か? まあいい。
 それよりも――俺をコピーと比べるな」
「本物ではないだろう?」
「ならば俺は高槻ですらない」
「それを理解しているものは他にはいないだろう。
 むしろ知っていてもそのように諦観できるものこそいない。
 ”ここ”を任されているだけはあるな」
「くだらん。……報告書だ。持っていけ」

顎で高槻はその資料を男に示した。

「それからこれを持ってきた」

黒服は似たような紙の束を机の上に置いた。

「……なんだこれは?」
「返却資料らしい。詳細は知らないが」

何枚かを手にとって見比べてみる。

「バカが……。いまさらこんな太古の記録に文句をつけられても困る」

ちらりとその内容が覗ける。

――――――――――――――――――――――――――――――――――
##類似性の発生について##

不可視の力を通じた意識領域の結合についての問題点。
:端末となるものに逆流による侵食が起こる。
:統制御を行える可能性は今のところ”悪魔”にしか見込めていない。
前報告による。
”神奈”の活性化がどの程度の影響を及ぼすのか不明。
第一次実験時に於けるパルスの共有率が圧倒的に制御できる限界を超えている。
(神奈の”肉”を用いた場合)

##”月”の消滅による副作用について##

不可視の力の変質率。
起点から遠いほど影響は少ないことが判明。
オリジナルの自我の損傷率――2割以下を見込む。
ただし維持する段階で磨耗する前提である。
意識の流出率は今のところ不明。
暴走率:=神奈との距離(結界の効果は計算に入れていない)

観察記録#567 CLASS,A1による――。
――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ふん……まあいい。島のことは老人どもに任せておくだけだ。
 どうせ死ぬことには変わらんだろうがな」
「結局きもは悪魔の処遇だけということか」
「一般人が勝手に殺しあっているうちは単なるゲームだ。
 まぁ、どさくさにまぎれて死んでくれるならそれに越したことは無いが」
「……少し喋りすぎたようだ。これで帰投する」

黒服は資料を持ったまま、音も無くそこをあとにした。

「……ふん」

興冷めでもしたのか、高槻のそれは既に萎えきっていた。
そして、その日は妙に来客の多い日で――。

バタム。
扉の音――これは、誰かが入ってきたわね。

「……来たか。では言い訳してもらおうか」
「……」

若い研究員――高槻と同じく白衣を着た男だった。

「とぼけても無駄だ。おまえが研究結果を横領していることは分かっている」
「……」

研究……よく分からない。

「反射材はトップシークレットだ。
 そもそも”あれ”を始末するために用意するものなんだぞ。
 分かっているのか?」
「……」

高槻は立ち上がると、私の唾液でべとべとになったものを仕舞い
もう一人の研究員に歩み寄った。

「……」
「お前――」

おもむろに、高槻はもう一人の男の腹を蹴り付けた。

「がっっっ!?」
「自分のやっていることもわからないようだな」

うずくまった男を、高槻は冷たく見下ろしている。

「もういい、お前も島へ行け。無論参加者としてだ。
 ――まあ、処刑と違って生き残ればいいのだからな」
「――!?」
「そんな顔するなよ、自業自得なんだからな? 
 お前のいたずらについては俺が処理しておいてやる。心置きなく殺ってこい」

(もっとも、お前が行くことは既に決定事項だったがな)

高槻は、いやな笑みを浮かべるとごそごそとポケットから小箱を取り出した。

「これはお前らの体に入っている爆弾の起爆装置だ。
 これがある限りお前らの命は俺が握ってるも同じ……分かるな?」

鍵穴の付いた小箱――、高槻はそれをいとおしそうに撫でている。

研究員はそれを無表情に見ている。

「……薄い反応だな、つまらん!」

ガッと高槻は研究員の顔を蹴り上げた。

「ふん、まあいい。せいぜい俺を楽しませてくれよ――」

そして、高槻は部屋を出て行った――。

……私は、一言も発せず、ただそのけりつけられた男を見つめていた。
そして――男も私の視線に気付く。

そして、ずっと守っていた沈黙を破り、口を開く。

「君は……高槻のお気に入りなのか?」
「そうかも知れません……」
「ならば聞いてるか? 君の妹も今度のゲームにエントリーされていることは?」
「由依……が……?」

いまさらそんなことを……いやむしろこの男は何故そんなことを私に……。

「君――」

再び、男が口を開いた。

「――俺と一緒に島に行くつもりは無いか?」

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