なんでだろう…
自分の手から三度矢が放たれる。
右手が一瞬、魔力で熱くなるのが感じられた。
――ヒュン!――
手応えは無い。
身体が音のする方へ駆け寄る。
(あれはただのアラーム……)
知識が自然とはじき出す。
「なんじゃこれは!」
(囮だ、アラームは囮、囮? 囮…囮……)
麻痺した頭で同じ言葉が繰り返される。
何か答えが出そうなのに出てこない。頭が答えを出すのを拒んでいるかのようだ。
操られ始めて。抵抗して。逆らえなくて。自分の身体で人が殺されて。
もう何も考えたくなかった。
「ゲーム・オーバー」
振り向いた先に銃口。
(あ…、罠…)
考えたくなかったのに、無情にも理性が答えを出した。
「くうううっ!」
口から出た言葉は、自分の意志で出した言葉では無い。
意志で出せた言葉はもっと小さな声。
「いや……死にたくない…や…だ……」
――カカカカカカカカ!――
自分を守ろうとする別の意志が障壁を張る。
涙が頬を伝う。
緊張でのどがカラカラに乾く。
「や…死ぬのは…死……」
叫ぶことすらできなかった。
――パララララララララララッ!――
二度目の斉射が近くのバッグを襲う。
自分ではなく、明らかに狙いはバッグ。
意味するところはわかった。
「ひ……」
(ひどいよ……)
彰と目が合った。
彼の顔は…。
(なんでだろう…)
苦痛でひどく歪んでいた。
――ドゴオオオオオオオオオオオオオン!――
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