×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

捕える者、阻む者(修正版)


[Return Index]

衝撃が北川の背中から全身へと伝わった。息が詰まる。
飛びそうになる意識をふんづかまえながら叫ぶ。
「神尾さん……逃げ………逃げろぉ!」
根性でこじあけている瞼。その内の瞳には、妙な軌道で転倒する神尾さんの姿。
一回転しますといわんばかりの勢いで転倒した観鈴を見て、ああ 俺、何やってるんだろう。と言う思いが頭をかすめた。
「知らなかったのか?神奈備命からは逃げられない」
言いながら、神奈備命は観鈴との距離を詰めていく。
(なんだ……クソ……神尾さんのあの妙な転び方も、てめーの仕業かよ……)
銃の弾倉にはもう玉は残っていないようだ。クソ!銃なんか投げても大したダメージには……!
ナイフ、ナイフがあったか。確かこっちのポケットに……

そのとき、北川の視界の端に、あるものが止まった。



神奈備命からの強烈なプレッシャーに、観鈴は逃げるどころか、足がすくんで動かせなくなっている、と言うのが実情だった。
神奈備命から手が伸びていく。目を凝らせば、床のタイルの模様が透けて見えるのが観鈴にもわかったかもしれない。
その手は、ココロの芯を捕らえるように胸元に伸び……
音も無く、観鈴の「内側」に入っていった。

目に見えるものがすべてブレる。それでも神奈備命とやらの姿をオレの目は捉えていた。
その姿は、今、自分がかき消したはずの体のパーツが、ほとんど元に戻っているというありさまだ。
思わず叫ぶ。
「く…くそ……、効いてねーじゃねーかよ!」
「いや、効いておったよ。そうじゃな。柱のカドに頭をぶつけたといったところかのぉ」
そういうこと訊いてるんじゃねえっつの。
「余も完璧ではない。そう…まだ完璧ではないのじゃよ」
ち その証拠が、まだ生えてきてない左手ですよってか。ピッコロ大魔王かよ。クソ。
「だからそなたの身体を…いただくとしよう」
神奈備命が神尾さんに向き直って、言った。
そして、一歩、距離を詰める。
「が…がお……」
あの分からないすごみの言葉を神尾さんは発した。いまはそう言う場合じゃねえって!



(わたし……わたしは……)
観鈴のココロに伸びた手は、それを包み込むように、ゆっくりと。
(寒いよ……冷たいよぉ……)
そして、それをしっかりと制圧できるように、厚く。
(が……がぉ………)
その、冷たい、手は。
(いやだよ……こわいよ……)
観鈴の、ココロを、握り、潰―――

「おりゃあぁぁッ!!」
「クケーーーーーーーーッ!!」
一人と一匹の怒声が響いた。

凄まじい勢いで飛んでいく烏と、その嘴は、観鈴に伸びた神奈備命のその腕を、空を切り貫いていた。
「うぬうッ!!」
神奈備命は確かにその顔を苦悶の表情にゆがめ、観鈴の中の手をひいた。
「クワオッ!?」
直後、烏は壁に激突し、床に力なく落下した。
そしてやおら立ち上がり、千鳥足とも言えるであろう足取りでしばらくふらふらとさまよった後、気絶した。
「今だ神尾さんッ!逃げろ!!」
全力で烏を投げつけた反動でくらくらしながらも、北川は一心に叫んだ。

「……うう」
観鈴はその場にうずくまり、凍えるようにして体を震わせていた。
(・・・・・・?)
突然の事に北川の思考が一瞬とまる。しかし北川の頭脳はすぐに活動を再開し、いささか偏った知識が頭のなかを巡り始める。
(さっきの接触の所為か?)
北川は一瞬で原因を推察する。と同時に、事態が全く好転しなかった事も察知する。
むしろ美鈴が動けなくなった分、事態は悪化したとも言える事まで理解する。
「おのれ……誰も彼も、余の行動を妨げる……」
嫌悪感か、殺気か。とにかくそれは、北川に向けて発せられていた。
「く、くそっ!」
北川はナイフを投げつける。さすがにそこは素人、回転しながら飛んでいくナイフは、しかし神奈の体の中心を捕らえていた。

「……!!」
神奈備命の表情がはじめて恐怖に変わった。もしもあのナイフに先程自分の手を切り裂いたほどの意志力が篭もっているとしたら―――!

ナイフは神奈備命の体を貫き―――否、神奈備命の体をすり抜け―――

奥の壁に当たり、床に落ちる。部屋に響き渡る金属音が、空しかった。
神奈備命の表情に、先程の恐怖は微塵も無かった。
「なるほど……先程の意思力は、お前だけではない、あの生物のものでもあったということか……
下等生物の分際であれほどの意思力を備え持ち、生意気に翼までつけておる……!」
神奈備命は、烏と北川を交互に睨みつけながら言う。苛立ち、怒気―――神奈備命の発するプレッシャーが強くなった気がした。
が、すぐに観鈴に向き直り、言う。
「……そこまでしてこの体を護りたいか。じゃが、これは既に余のものじゃ。
この体を依代とできれば、余の力は……」
そして、またあの手が伸びていく……



メインモニターから発せられたその音は、北川、神奈備命、観鈴、あるいは今はこの部屋にいない者の耳にも届いたであろう。
神奈備命はその手を止め、思わずそちらを振り返る。
北川は、CD解析のゲージの表示が、99%から100%になり、バーがすべて埋まるのを、確かにみた。



【観鈴、神奈備命の干渉を受け精神的ダメージ。】
【北川、致命傷でこそないがダメージ甚大。】
【神奈備命、注意がメインモニターへ。】
【烏、気絶。】
【解析完了アラーム、鳴り響く。】

[←Before Page] [Next Page→]