to the end ―そぞろ歩き―
再び闇に埋もれたこの島で、俺は一人彷徨っていた。
他の皆は一足早く潜水艇で脱出したところだ。
何故俺が残っているのか、理由は簡単。単に定員オーバーだったんだ。
元々二人乗りだったところに全員で乗り込もうとしたのだから、無理もない。
女の子達には先に行ってもらった。それだけのことだった。
梓は、悪いね、などと言っていたけど……無事に帰れただろうか。
なんとなく島を歩きながら、これからのことを考える。
一体、俺達はどうなってしまうのか。再び日常に還ることができるのか。
いや、そんなこと考えるまでもなかった。
戻れるわけがない。
この島で、皆、大切なものを失ってしまった。
家族、友人、或いは恋人を、あまりにも理不尽な死によって。
人として大切なものをなくした人もいる。
俺もその一人。
例え、どんな理由があろうとも……。
人を、殺してしまったんだ。
全てが終わり一人になって、俺は改めてそのことについて考えた。
あの時の感覚が、今更確かな実感となって、俺を蝕む。
手を目の前にかざし、掌を見る。
この手で殺した。人を殺した。
こんな人間が、再び日常に埋もれて過ごすなんて。
許されるわけないじゃないか。
夜風に吹かれながら、高い、高い空を見上げる。
三日間、俺達をただ見下ろすだけだった、この空を。
空は俺達に何もしてくれなかった。ちっぽけな俺達に、何も……。
いや、案外そうでもないか。
今、こうやって、星明かりが大地を照らしてくれる。
俺の歩く道を照らしてくれる。
その先は、決して、明るいものではないだろうけど。
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