冷たい雨の少女(1)
039番、上月澪は森の中を走っていた。
わけがわからなかった。
こんな場所に連れてこられ、殺し合いなんてさせられて。
少し前までは、学校で平凡な日常を過ごしていたのに。
木の根に足をとられ、転ぶ。
だがすぐに起き上がり、走り出す。
誰かに狙われているかもしれないのだ、止まっているわけにはいかなかった。
『こわいの。嫌なの……』
瞳に大粒の涙を浮かべながら。
「澪!」
誰かに呼ばれ、振り返る。
043番、里村茜だった。
『先輩なの!』
知らない人間ばかりのこの場所で、折原浩平と並んで信頼のおける人だった。
一見冷たいように見えて、実は誰よりも心の暖かい少女。
気付いた時には、茜の胸に飛びこんでいた。
「澪……怖かったの?」
うんっ。
首を縦に振る。
「そう。もう大丈夫……」
先輩の声が聞こえる。
よかった、こんなに早く会えてよかった。
信頼できる人に。
その時だった。
首筋に痛みが走る。
全身から力が抜け、地面に倒れた。
何が起きたのかわからない。
だが、最後に見えたのは、血の滴るナイフを持った茜の姿だった。
「もう、何も考えないですむでしょ」
その声が澪の耳に届くことは、なかった。
039番 上月澪 死亡
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