封印


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 ゲームがスタートして数時間ほど経った頃、柳川祐也[098番]は森の奥に人影を見た。
(誰だ……)
 自らの気配を殺して近づく柳川、向こうはこちらにまだ気づいてはいないようだ。
 だが少しずつ近づくにつれ柳川は奇妙な違和感を感じていた。
(気配がしない……?)
 対象まで数メートルに近づいたところで柳川はようやくその違和感の正体に気づいた。
 その人物の耳についている奇妙な突起。
(メイドロボ――あの形状はHM-13型セリオか、気配がしないわけだ)
(だが、奴はいったい何をしているんだ?)
 柳川がそう思うのも当然であった。彼が発見したときから彼女は天を仰いでずっとその場に立っていたのだから。
 微動だにしないのはロボットだから当然ともいえた、だが休んでるようにも見えない。
 その時不意にセリオの頭が動いた。どうやら活動を再開したらしい。
「やはりサテライトサービスは利用出来ないようですね」
 セリオはそんなことをつぶやくと、柳川の方に歩いてくる。
(気づかれた? いや、まさかな)
 そう考える。だが柳川はいつ襲い掛かられても良い様に臨戦体制を整える。
 セリオは正確にこちらのほうに向かってくる。
 彼女の唇が動いた。
「なぜでしょう? なぜサテライトサービスが利用できないのでしょう? 柳川さん」
(何!?)
 自分の名前を呼ばれ、柳川は一瞬だけ反応が遅れた。その一瞬でセリオは柳川の目の前まで接近する。
 衝撃。
 腹部に受けた一撃は彼を吹き飛ばす。立ちあがる柳川の目には殺意が宿っていた。
「……もういい、キサマは死ね」
 そうつぶやき、柳川は全身に意識を集中させる。自らの血に、遺伝子に組み込まれた力を開放させようとしている。
 だが――
(力が発動しない?)
 再び目の前に迫ったセリオから手刀が振り下ろされる。とっさに左手でガードする柳川。
(いや、力が発動しないんじゃない、何かの理由で力が制限されている)
 今の自分はせいぜい一般人に毛が生えたレベルだ。そう考えた柳川は空いた右手で腰のナイフを引き抜き、横に凪ぐ。
 それをバックジャンプで回避し、セリオは距離をとる。だがそれに合わせて柳川も跳躍していた。
 柳川のナイフから次々に繰り出される突き、セリオはその突きの一つ一つを確実にかわしていく。
 しかし、柳川の攻撃は止まらない。そしてついに柳川の突きがセリオの眉間を捕らえた。
「!」
 眉間まであと数センチのところで柳川のナイフは静止している。彼の手首はセリオの両手がしっかりと固定していた。
(どうやら彼の力より私の力の方が優勢のようです)
 そう考えながらセリオは徐々に眉間からナイフを離して行く。
 だが次の瞬間、柳川の指が何かのスイッチのようなものに触れた。そして――

「……どうやら鬼の力には何か制限がかけられているようだな」
 そう呟きながら柳川はセリオの頭に刺さったナイフの刃を引き抜く。
 彼に支給された武器、それは旧ソ連軍の使用していた発射式ナイフ「スペツナズ・ナイフ」だった。
 セリオのバッグを拾い、柳川は立ち去る。
 そしてそこには機械の塊だけが残された。


052番 セリオ 死亡
【残り97人】

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