「おお、まいしすたー瑞希ではないか」
「あ、大志じゃない」
高瀬瑞希(055)は、巨木にもたれかかった九品仏大志(034)に声をかけられ、振り返った。
「全く、冗談じゃないわよ。何か悪い冗談に違いないわ。さっさと和樹をみつけて帰りましょ」
瑞希は、ぶつぶつと洩らしながら辺りを見回した。
「しかし、馬鹿みたいに広いわね。誰か、ここらへんに住んでる人とかいないのかしら」
「さあな」
大志が、ゆったりとした動きで身体を起こす。
「ときにまいしすたー。誰かと会わなかったかね?」
「え? 全然会わなかったわよ?」
「そうか……」
大志が、明後日の方向を眺めながら、ポツリとつぶやいた。
「やれ、先行者」
「え?」
閃光が、瑞希と周囲の下草を灼いた。
「すまんな、まいしすたー。抗議は地獄で聞こう」
わずかに残った燃えカスを睨め下ろしながら、大志はボソリとつぶやいた。
右上腕部に、小さな切り傷がある。肌がそこを中心に、赤黒く染まっていた。
「あの女……岩切といったか。毒を仕込んだ刃とはな……吾輩の命、永くはあるまい」
大志が、うろん気な目つきで空を眺める。
「わが女神……あさひちゃんだけは守らなくてはいかん。そのためには、吾輩が修羅となるしかない……
吾輩に支給された、この先行者……有効活用させてもらおう」
055 高瀬瑞希 死亡
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