選択
「ふぅ…」
千堂和樹(053)は見つかりにくい場所に着いた安堵感からか溜息をついた。
まさかこんなことに巻き込まれるとは。だがいつまでも悲観してはいられない。
そう考えた彼は自分に出来ることをやろうと考え、まずは支給されたバッグを開いた。
バッグの中から出てきたものはペットボトルに入った水、その辺のコンビニで売ってそうなパン、島の地図、コンパス、そして機関銃だった。
こんなところまで原作と同じ様にしないでもいいだろうに。と和樹は思った。
そして機関銃に備え付けてあった説明書には目を通さずに彼は機関銃のセットアップを始めた。
「まさかバトロワ本を描くときに調べた資料が役に立つとはな、なんつー皮肉だよ」
そうつぶやきながら機関銃のセットアップを完了する。そのころには彼の頭の中にひとつの選択肢が浮かんでいた。
[この殺人ゲームに乗りますか? YES/NO]
(別に俺はどっちだっていいと思っている)
それはあたかもこの殺人ゲームの元ネタである小説の1シーン――原作小説における殺人鬼役の少年がつぶやいた言葉――のように彼の頭の中に現れた。
ほんの少し悩んだ後、和樹はひとつの結論を出した。ポケットの中から10円玉を取り出す。
「表が出たら奴等と戦う、裏が出たらこのゲームに乗る」
和樹は10円玉を天高く放り上げた。
力を加えられた10円玉は次第に勢いを失い、重力にしたがって地面へと落下する。
自分の足元に落ちた10円玉に写っていたのは……建物、すなわち表だった。
「そうか」
和樹はそうつぶやくと足元の10円玉を拾い、歩き始めた。
「まずは仲間を集めるか……瑞希や大志あたりだな」
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