宮田健太郎(095番)は、走っていた。
スタート地点から、出来るだけ遠く離れるために。
「はぁ…。はぁ…。…ふぅ。とりあえず、これだけ離れておけば大丈夫だろ」
ある程度行ったところで森の中に分け入り身を潜めた。
デイパックを地面に下ろし、一息吐く。
「後ろは、いかにもやる気満々って顔の人だからな。柳川さんだっけ。
とても協力しようなんて言い出せないよ。しかし…」
今、自分の置かれている立場を把握しようと考えを巡らす。
「いつも、こんなのだよなぁ。人の意見聞きもせず勝手に何か決められたりさ。
デスゲームって…。俺一度死んでるのに」
溜め息混じりに、愚痴をこぼした。
「…愚痴を言ってても始まらないか。まず、どうにかみんなと合流しないと…
スフィー達が居れば、随分と生き残れる確率も…」
考えは、そこで中断せざるを得なかった。
丸い物体が放物線を描き、コロコロと自分の方に向かってきたのだ。
「なんだ? …クソッ!」
反射的に、デイパックを持ち上げその場を離れた。そのすぐ後、
ドンッ!
木の根本で炸裂し、木が粉々になって砕け散った。
「んふふー。やったかしら?」
長岡志保(063番)は、手榴弾片手に爆散した木の根本を伺っていた。
「しかし、いきなり1人見つけちゃうなんて調子良いわね。武器も当たりだし。
このまま頑張って、このデスゲームをネタに東○ポに入社してやるんだから!」
ひょんな事から将来設計もバッチリ整った長岡志保。
「もう、誰もわたしを止められないわ! アハハハッ!」
パンパンパンパンッ!
銃声が鳴り響いた。まるでそれは…
「ぐふぉっ!」
鉛弾を大量に食らい、吹き飛ぶ。
「危なかったな…。でも、大声で笑ってくれたお陰で分かりやすかったよ」
「や…、やるわね。わたしに土を付けた男はあなたで二人目よ…」
息も絶え絶え、近づいてきた宮田健太郎に言葉を返す。
「しかし、拳銃とか使うのは初めてなんだけど…」
コルトガバメントを右手に携え、話を続ける。
「使いやすいんだよな。まるで、俺の為にあるような…
撃つ度に気持ち良くなるし…。人を殺したい欲求でもあったのかな…」
「安心して。撃つ度にそう感じるのは、人を殺したい欲求のせいじゃないわ。
それはね、椎は…、うっ! ガクッ…」
元気にペラペラ喋っていた筈なのに、突然事切れる長岡志保。
「死んだか…。まぁ、人が死ぬ時ってこんなものだろうしな。さて、手榴弾貰っていくか。
ん? なんだこりゃ? 『志保ちゃんレーダー』? ああ、これで俺の事を見つけたのか…
これは役に立ちそうだな。他にはと………」
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