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奇妙なコンビ


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 長瀬祐介(064)は身を隠すように森の中の茂みに座りこんでいた。
 彼は何事か一心に念じている様子だったが、やがて深いため息を吐くと共に
ゆっくりと目を開けた。
「……だめだ。やっぱり出来ない」
 彼が持つ、普通の人間とは違う能力。――毒電波を操る能力。
その能力を行使することが、今現在、全く不可能になってしまっている。
「この島、電波を妨害する何かの力が働いてるのかな」
 事実、あのホールで説明を受けているときも、高槻とかいう男を『壊して』やろうと
悪意ある電波を送りつづけたのだが、まるで手応えが無かった。
「殺し合い……か」
 殺し合いをして、最後に勝ち残った者だけが生きて帰れる。それは、
自分が妄想の世界で生み出した、全てを破戒し尽くす爆弾と酷く似ている気がした。
「つまりは、狂ってるってことなんだろうな……アイツも、昔の僕も」
 普通であると思ってた自分の歪んだ一面を思い出して、祐介は苦笑いを浮かべた。

 と、ふいに物音がした。
 その異常な物音に、祐介は思考を一時中断させて素早く身を伏せる。
とりあえず『こっちへ来るな』と電波を飛ばしてみるがやはり効果は無い。
 祐介は諦めて、息を殺してそれが来るのを待った。
「ぴこ♪」
 果たして物陰から現れたのは、ぴこぴこと奇妙な物音を立てながら
呑気に移動している白い毛糸玉のような物体だった。
「……な、なんだあれ?」
「ぴこ?」
 思わずうめいた祐介に気付いたのか、毛糸玉はこちらを向いたまま
ぴこぴこと尻尾(らしきもの)を振った。どうやら喜んでいるらしい。
「犬……なのかな?」
「ぴこ!」
 元気よく、毛糸玉が吠えた。肯定の意味らしい。
 そういえば。ホールの中にいた女の子で、この白い毛糸玉を持ってた
娘がいたような気がした。
「ふぅ。……世の中には奇妙な生き物もいるんだなぁ」
 とりあえず、危険は無さそうだと判断して祐介は警戒を緩めた。

「飼い主とはぐれたの?」
「ぴこ」
「その娘の匂いを、今辿ってるとか?」
「ぴこ!」
 会話が成立してしまうところに若干恐怖を覚えながらも、祐介は毛糸玉との問答を続ける。
「その娘は近くにいるの?」
「……ぴこぴこ〜」
 近くにはいない、という意味らしい。……ふと、祐介は思い付く。
犬の鼻は、瑠璃子さんたちを見付けるのに役に立つかもしれない。
 飼い主を見つけて、その人と一緒にみんなを探す。うん、悪くない。
祐介はそのアイデアを、毛糸玉に提案する。
「ねぇ。もしよかったら、僕と一緒に行かないかい?」
 毛糸玉はしばし沈黙したが、顔を上げると
「ぴこ!」
とつぶらな瞳を潤ませOKしてくれた。その様子に祐介はひるむ。
「よし。じゃあ、早速出発しよう」
「ぴこ」
 祐介は立ちあがると支給されたデイバックを背負う。運が良い。
「ところで、名前はなんて言うの?」
「ぴこ」
「ぴこ、か。僕は祐介。宜しくね、ぴこ」
「ぴこ〜」
 毛糸玉――ポテトは、違うと首を振ったが、祐介にわかるはずもなかった。

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