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「美凪ぃ、国崎往人も、どこにいるんだろ」
 ゲーム開始からずっとこの調子である。
 彼女には頼れる人間がこの二人しかいないのだ。
 そしてその二人は、今、隣にいない。
 自分はひとりぼっちだ。
 寂しさで心がいっぱいだった。
 だから――

「みちるっ!」

 往人に声をかけられ、嬉しさのあまりに、

 ガスッ!

 往人のみぞおちに頭突きをたたきこんでいた。
「―――っ!!」
「にゃはは」
 ボコッ!
「ぬにょめりゃ」
「まったくお前は……心配かけやがって」
 頭をかきながら言った。
「へへへ。心配してくれたんだ」
「……一応な」
「ん、ありがと」
 今度はゆっくりと、往人にしがみつく。
 その顔は往人から見えなかったが、小さな肩が震えていた。
 何も言わずにその頭を撫でてやる。
 次の瞬間――
「……っ!」
 しがみついていたみちると共に、その場を飛び退く。
 一瞬遅れて二人のいた空間を、包丁を構えた少女が切り裂いていた。
「にょわわっ!」
「みちるっ、目と耳を閉じてろ!絶対に目を開くな!」
「にょえ!?」
「大丈夫だから、早くしろ」
 ――大丈夫。国崎往人守ってくれる。
 みちるは素直に目を閉じ、耳を塞いだ。
 往人はそれを確認した後デザートイーグルを取り出し。
 人影に向けて発砲した。
 それで充分だった。
 弾丸は相手のこめかみをうちぬき、少女――砧夕霧(030)は即死した。

「もういいぞ」
「うに……」
 その場を急いで離れ、みちるはようやく目を開いた。
 そして問いかける。
「ねぇ、国崎往人?」
「なんだ」
「その……殺しちゃったの?」
「……俺は、お人好しの兄ちゃんじゃないんだぞ」
「うん、わかってるよ……」
 そう言ってやった。
 できればこの少女の口からは「死ぬ」「殺す」なんて言葉、聞きたくはなかったのに。
 黒い少年の言葉が響く――殺しあうために――
 だが、自分は違う。
 この小さな少女を守るため、そして、どこにいるかわからない深い母性をたたえた瞳を持つ少女を守るため。
 とりあえずはその為に、殺す。
「大丈夫だ。行くぞ、美凪を探しにいかないと」
「うん……」
 みちるの顔は、まだ、晴れなかった。

「そういえば、みちる。お前の支給武器って何なんだ?」
「あ、まだ見てない」
「ちょっと見せてみろ」
「うに」
 鞄を往人に手渡す。
 往人はそれを開け、
「どわっ!!」
 思わず鞄を取り落とした。
「……マジか?」
 中から、一匹の小さな白い蛇が這い出てきた。
「にょわーっ、蛇だーっ。この程度で驚くなんて、国崎往人もまだまだだねー」

 ボコッ!

「にょべりゅ」
「突然でてきたら驚くだろうが!」
「うぅー、やったなー!」

 ガスッ!

「ぐわっ」
 みちるキックが炸裂する。
 うずくまる往人をよそに、みちるは蛇に話し掛けた。
「ねぇねぇ、一緒に行く?
 ――そう、一緒に来るんだ。
 にゃはは、いいよいいよ。みちるの頭の上に乗っていいよ」
 しゅるしゅるしゅる。
「にゃははっ!」
「……マジか」
 蛇と意思疎通をするみちるを見て、改めて「こいつは一体?」という思いが込み上げる。
 でも、まぁ、何にしろ。
(笑ってくれて、よかった)
 そんなことを思い、次の瞬間には自分の考えに照れていた。

030砧夕霧 死亡
【残り 88人】

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