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交叉。


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七瀬彰(068番)は、暗闇の中で目を覚ました。同時に太股に走る感覚。
「痛ぅ……」
良かった、死んでなかった。そうさ、足撃たれたくらいで死ぬもんじゃない。
弾丸自体がそれほど大きくなく、当たった弾の数もそう多くなかったから、
ただ痛い、というだけで済んだのかも知れない。
しかし、未だに流れ続けている血を止めなくば、失血死の恐れはある。
「っていうか……武器がないじゃないか」
どうせ僕の武器はフォークだけど……と、哀しそうに呟いて、彰はなんとか立ち上がった。
さっき女の子が襲いかかってきた場所から、そう遠くには離れていないはずだ。
――あった、フォークだ! 彰は喜んでそのフォークを拾った。
こんなものを、戦闘に使う目的で捜しに来たのなら彰は相当馬鹿である。
「弾丸、抜いとかないとな」
その為にである。
三つ又の先を突き刺すのは無謀なので、柄の部分で摘出する事にする。
――九発。身体にめり込んだ小さな弾丸をすべて抜き終えて、彰は息を吐いた。
服の裾を破り、血が流れている場所をきつく結んだ。途端に白い生地は赤く染まっていく。
消毒もしなくちゃいけないな、薬も欲しいな。
――そんな事を考えている内に、恐怖が襲いかかってきた。
それは、誰かが襲いかかってくる恐怖だとか、そういうのではなくて――。
「僕、死ぬんだろうな」
こんなフォークで、どうやって生き残れっていうんだ。
死ぬんだ。……怖い、怖い、怖い。

がさり。

「だ……誰だっ」
慌ててフォークを構えると、彰は茂みの中に震えた声を投げた。
知り合いだろうか、それとも……

「あ、あのっ」
現れたのは。小柄な、小学生くらいかと思われる可愛らしい少女。
「ご、ごめんなさいごめんなさい、殺さないでくださいっ!」
ハリセンを持ったまま腰を抜かしている。顔を伏せ、何も見ない、何も聞かない、とばかりに耳を塞いでいる。
怯えるその姿を見て、思わず彰は微笑んだ。
先程までの自分も、この小学生と似たような感じだったのだろうか。
「だ、大丈夫、僕だってやる気はないから」
「え?」
少女は、震えたまま、怯えた表情を消さぬまま、こちらをちらりと見た。
「え、あの」
「ほら、僕だってこんな武器だから」
フォークを見せると、少女は、明らかに安堵の表情を見せた。フォークだもんな。

「へえ、初音ちゃんはお姉さん達を捜しているんだ」
「うん」
少女――柏木初音(021番)は、先程とはうってかわって明るい表情になって、元気に頷いた。
茂みの裏で、二人は並んで座り、彰が初音の話を聞く形になっている。
「お姉ちゃんが3人いて、あと、耕一お兄ちゃんっていう人を捜してるの」
――まったく、なんでこんな幼い小学生までが殺し合いをしなければならないのか。
「でも、みんなばらばらになっちゃったから……」
声聞いた時は、もう、駄目かとも思ったんだよ。初音は、そう云って微笑んだ。
「よし、決めたっ」
彰は出来るだけ大きな声で、そう云った。
「え?」
「君の捜している人を、一緒に捜してあげるよ」
彰は、少しだけ勇気を持った。――それは、彰が持つ一番の武器だったのかも知れない。
フォークよりはよっぽど強い。ハリセンよりも。

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