[Return Index]

先程の放送の内容はさして驚くほどのことでもなかった。
高槻だから。その一言で説明がつく。

天沢郁未(003)は慎重に辺りを探りながら歩く。

割と開けた場所。そこは湖のほとり。

そこで人が二人、倒れている。
既に戦闘は終わっている。だが、血の匂いだけが数刻前までの凄惨な光景を物語っていた。
「一人は…絶命してるわね。」
首の骨が折れては即死だろう。わずかに目を閉じて心で弔う。

そしてもう一人の男。息はあるようだ。
この男がやったのかもしれない。だが、常人にあんな骨の折り方ができるだろうか。


どちらにしても先程の放送が事実ならば先ず自分の命が危ない。
自分を殺せば生きて帰れる可能性が増えるのだから。

もちろん高槻がそんなことするはずがないのは百も承知だ。
高槻のことだ。これも余興のひとつとしか考えてないのだろう。
少なくとも私や晴香は生きて帰すつもりはないだろうから。

先程の放送を聞いた人と行動するのは危ないだろう。いつ殺されるか分かったものじゃない。
もしかしたらその中に高槻の刺客がまぎれてるかもしれないのだから。
だが、この男は気絶していた。放送を聞いていない。

今は少しでも多く仲間が欲しい。郁未はこの男を助ける決心を固めた。
裏切られてもリスクが少ないように、男の武器の入っているであろうデイバックは一時奪っておく。
(もちろんボディチェックも含めてだ)

助かるために他人を利用しようとしている、そんな自分が昔から嫌いだった。
「やだな……お母さん、私イヤな女になっちゃったよ…」
私は少し、泣いた。

[←Before Page] [Next Page→]