「私をのけものにして、いちゃいちゃしないでくれる?」
冷めた七瀬の声が聞こえ、浩平と瑞佳は我に帰り、間を開けた。
「わぁっ! なんてこと言うんだよっ!」
「そ、そうだぞ。仲間に入りたかったらお前も抱きついてこれば……」
「んなことするかいっ! どアホっ!」
ゴインッ!
タライを使ったツッコミが炸裂する。
「ぐあっ……痛いじゃないか!」
「『浩平が』『お前が』悪いっ!」
二人そろってさらにツッコミが入る。
「で、バカはこのくらいにして。
これからどうするの?」
それでもタライを持ったまま、七瀬が言った。
「そうだな。気になるのは、さっきの放送の五人だ」
「あぁ、まずはこの五人を……ってやつね。
それがどうかしたの?」
「わからないか? だから七瀬なんだ」
真顔で言う浩平に無言でタライを構える。
「わぁ、ダメだよっ! 浩平も変なこと言わないの。
で、どうして気になるの?」
「つまりだ――
高槻とかいう野郎がわざわざあんな放送で皆を煽ってあの五人を殺すように仕向けただろ。
高槻を殺したらこの島にミサイルがっていうのは、実はあまり重要じゃない。嘘かもしれない。
あの五人があいつの思惑通りに死んだら、次は自分の命が危ういんだ。
それでも皆を煽った。これには何かあると思う。
彼等は高槻にとって、絶対な脅威であるはずなんだ」
「へぇ……」
「折原、あんた凄いのね……」
感心する二人。
「わからない。そこまで特別扱いされるということは、逆に彼等がそう簡単に殺されることはないはずだ。
返り打ちを狙って一気にゲームの参加者を減らそうとしているのかもしれない。
ただの連中の遊びかもしれない。
何にせよ、彼等が話せる立場の人間だったら会ってみたいが」
そこまで言ったときだった。
「私に何か御用ですか?」
浩平の背後から声が聞こえた。
驚き、銃をとるのも忘れ、振り返る。
そこには今まさに話題になっていた人物、鹿沼葉子(022)が立っていた。