休息
湖から一望できる木陰まで男を運ぶと、郁未は一息つく。
高槻…
郁未が知る限りでは最もゲスな人間。
そんな人間がFARGOには大勢いるのかと思うと反吐が出そうだった。
あくまで推測でしかないが、不可視の力を持った人間を消すのも一つの目的なのかもしれない。
殺人ゲームが余興で、むしろそれが本当の目的…?
考えられることはいくつかあった。
「でも、由依は…普通の女の子なのよ…!?」
――郁未さん…!!
――わわっ、酷いですよ郁未さん〜!!
無邪気な笑顔が郁未の頭をよぎる。
「助けなきゃ。由依を、晴香を…みんなを。」
そしてお母さんを。
高槻の意図がどうであれ、郁未にできること、そしてしたいことはそれしかない。
みんなと合流する。
その後は……その時考える……!!
残酷かもしれないが、横で寝ている男を起こすことにした。
時間は
あまり、ない。
「起きて…ねぇ。」
怪我人にあまり乱暴にするのはためらわれたので、軽くゆさゆさと腕を揺する。
「う〜ん、むにゃむにゃ…由美子さ〜ん、そんなとこだめだって……デレッ」
「……」
「俺には既に激ラブな従姉妹の彼女がっ…てああ、そんな積極的に……ニヤソ」
「……」
パーーン!!!!
湖に肌を鳴らす音が景気良く響いた。