「舞と……」
舞はこのゲームが始まった時にこう言った。
「私は絶対佐祐理を守るから」
と。ここで私を守るということ。
それは、舞が人を殺す、ということになるかもしれない。
私は舞に人を殺しては欲しくなかった。
人を殺すことによって、舞が昔の舞に戻ってしまうような気がしてならなかった。
それに、舞には人を殺すというコトをどうしてもやってほしくなかったから。
ここに来てからの舞は、ここに来る以前の舞とは豹変していた。
私と2人で、学校の昼食を食べていたときのような、そんな時の穏やかな舞とは全然違っていた。
表情もキリっとして、硬いまま。
それになにか体中から殺気が感じられた。
私はこんな舞があまり好きではなかった。
だから私は、
「ねぇ舞、私を守ってくれるのはうれしい。だけど、誰も殺さないで欲しい」
そう舞に懇願した。舞はきょとんとしたけど、すぐに、
「わかった、佐祐理がそう言うなら私は殺さない……」
そういってくれた。私は素直に嬉しかった。
自然と涙が零れてきた瞳を右手で私は拭って、
「ありがと、舞」
と私は言った。
私の武器は、デザートイーグル。
もしもの時は、これで舞を守れる。私はそう思った。
もう人を殺しているから。
1人殺したということは2人殺しても同じだから。
だから、舞が危なくなったら、私が、やる。私はそう心に決めていた。
舞は、森の中にあった小さな空き地で竹やりを振り回していた。
「これなら、なんとか使える」
舞はそういって、地面に座り込んでいる私のところに来て、となりに座った。
「ねぇ、舞? 防空頭巾はどうしたの?」
私は舞に聞いた。
「ポケットにはいってる……」
舞はポケットから防空頭巾を取り出し、私に見せた。
「ほら、舞。せっかくもらったんだからつけてみようよ」
私は、舞の手から防空頭巾を取って、舞の後ろに回りこみ舞の頭に防空頭巾をつけ始めた。
「はい、できた」
私は舞の前に回りこんで、舞をみた。
「あははははは〜。舞、かわいい〜〜〜」
ずっと硬い表情をしていた舞が顔を少し崩し、ポケットに手を突っ込んだ。
そして、防空頭巾をもう1枚ポケットから取り出し、
「2枚あった。佐祐理にもつける」
舞は立ち上がり私の頭に防空頭巾をつけた。
「あはははー戦時中みたいですねー」
「ある意味そうかもしれない……」
舞はそういったけど、少しクスリ、と笑ったような気がした。
私は舞の表情が少し柔らかくなったのが嬉しくて仕方がなかった。