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僕たちの失敗


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 鬱蒼と茂る森の中で、北川潤(男子・029番)は独り、己の幸運を噛みしめていた。彼に支給されたデイバックは他の人間のそれに比べると遙かに巨大で重いものであった。この殺戮ゲームに乗った(自発的であってもそうでなくても)瞬間から、得物は豊富であるにこしたことはない。当然の事ながら最後まで生き残る事を希望している北川にとって、これが幸運でなくてなんであろうか。
 手榴弾? 地雷? それとも無数の弾薬とサブマシンガン? 中にぎっしりと詰め込まれた何かに、あれこれと想像を張り巡らしていると、この狂気のゲームに参加して、自分がわずかながらでも興奮しているのがわかる。安全な場所を求め、背中に巨大なバッグを担いで森を駆け抜けている彼の様は、端からは重度の躁病になった富山の薬売りにしか見えなかった。

「まずは護を探すこと。これが先決だな。後はアイツに任せて動いていりゃいいさ」
 周りに誰もいないことを確認し、腰を落ち着けると北川はひとりごちた。

 住井護。頼もしい従兄弟。いつもシニカルな笑みを浮かべて世渡りしてるあいつ。あいつに任せておけば、どういう状況になっても生き残れる確信はあったし、また北川自身も住井の足を引っ張ることなくサポートしてやれる自負もあった。
 それに何よりも、アイツと一緒に何かやらかす事が北川にとっては楽しくて楽しくてしょうがなかった。中学二年の時、家庭の事情で彼が北国に転校するまで、タッグを組んでいた当時の二人の呼吸には到底余人のおよぶところではなかったし、住井と北川も十分それはわかっていた。先の高槻からの死亡報告が流れたときにも、もちろん住井の名は入っていなかった。当然だ、あいつが誰ぞに殺されるようなタマなものか。

「護に会うまで、俺だってヘマできんからねー」

 キツキツになったジッパーを、壊さないように慎重に開ける。ぎしっ、ぎしっと少しずつ軋ませながら少しずつバックは開きはじめた。
「そら、ご開帳だ」
 ある程度ジッパーが緩んだのを見て、北川はニヤっと微笑んで一気にバッグを開いた。しかし、中からどさどさどさっと地面に落ちてきた物が何であるか理解したとき、彼の微笑みはそのまま瞬時に凍り付いた。

 もずく。

 もずく。もずく。もずく。もずくもずくもずくもずくもずくもずく。小さなチューブに詰められた黒いもずくパックの山。彼のバッグの中に納められていた物は素晴らしい武器の山ではなく、彼の命を守る防具でもなく、ただ、スーパーで投げ売りにされている一パック58円のもずくでしかなかった。
 ディバック一杯に入ってる水雲チューブが地面にこぼれおちる様を見て、北川は未来のルーレットの先は貧乏農場行きでしかないのだという事を薄ぼんやりと予感した。

「は、はは、ははは………」

 そういや俺って人生ゲームやると、いつも農場行きだったっけか───。

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