かっこつけ。


[Return Index]

で、ちゃっかり藍原瑞穂のマシンガンを拾っていたのは、
「夏と云えば海、海と云えば住井護っ」
である。別に今は夏ではないが、住井はなんとなくそんな独り言を云った。
バッグの中にマシンガンを放り込み、取り敢えずバタフライナイフを片手に、住井は森の中を散策していた。
従兄弟である北川潤と逢うためである。
放送で、聞いた事のある名前が呼ばれた。広瀬真希――クラスのスケバンである。
スケバンとは古い言い方だなあ、と思いながらも――
「始まっちゃってるんだよ、な」
呼ばれた名前の中に、自分が殺した少女の名前もあった筈で。
名前も知らないのに、オレは殺してしまったんだ――。住井は、少しだけ、哀しくなった。

住井は次の瞬間、歩みを止めた。がさり、という、やけに不用心な音が聞こえたからだ。
前方に気配を感じて、住井はナイフを強く握った。
誰だっ……潤に都合良く逢えるはずもないから、多分――
住井は覚悟を決めて、マシンガンを取り出した。殺されてたまるか、という意志。
だが――

「ひぃっ!」
声の主を見て、思わず住井は感嘆の溜息を吐いた。
土の上に腰を抜かし、割り箸を片手に震える女性だった。
自分よりいくらか年上の人のようだが、幼さの残る顔だ。
ショートカットの髪、細い身体、そのおっとりした目元、全部が――。
なんて綺麗な人だろう。というか、すげえ好みだ。
住井護は、その瞬間、この女性に恋をした。
「やめてっ、殺さないで、殺さないでっ」
涙を浮かべ、嘆願する女性。
「――バカな。僕はあなたを護るために生まれてきたんです」
住井は親指をぐっ! と立てて云った。
「僕が、この住井護が、必ずあなたを護ります」
女性――澤倉美咲(044番)は、唖然とした顔で、マシンガンを持った住井の笑顔を見つめていた。

[←Before Page] [Next Page→]