僕たちの失敗〜北川潤 vs 宮内レミィ
拝啓おふくろ様…その後お変わりはありませんか。潤です。
唐突に殺戮ゲームに参加する事になった僕ですが、与えられた袋を開けてびっくり玉手箱と申しましょうか、武器だと思った支給品がもずくパックというあたり、己の悲運を嘆く毎日であります。
護との合流も果たせず、また知人達の安否も杳としてしれない事に、僕自身も苛立ちを覚えるばかりでありますが、他にやることもないので、独り森の中、もずくでピラミッドを造っていたわけであります。
ところが。
突然空からどさりと女の子が振ってきたのであります。一瞬天使か、と見間違えるほどの綺麗な人でありましたが、よくよく見れば外国産のヤンキーでありました。さすがに天使は腫らしきった乳をセーラー服に包むことはありますまい。そう、僕の目の前にいるのは日がな一日スペアリブを貪り、ドクターペッパーを浴びるように飲み干す事に生き甲斐を感じているというあのヤンキーでありました。崖から足を踏み外したのか、ヤンキーは躯をしたたかに打って気絶しておりましたが、一応確かめてみると特に骨を折ったような形跡も見られませんでした。おそらくは木の枝に引っかかりながら落ちたことと、下が草地ということが幸いしたのかもしれません。
そうこうしている内に、ヤンキーは軽くうめき声を上げ、目を覚ましました。僕は早速この目覚ましヤンキーに、一体どうしたのか、なにが君に起こったのであるか、と尋ねたところ、ヤンキーは突然くわっと眦を開いて僕の肩をつかんだかと思うと、わっしわっしと僕を揺さぶりながら訳の分からぬ事をわめき散らしてくるのでありました。
「おでん種おでん種おでん種がいたのヨでもねハンターできなかったの信じられルおでん種シューティングしてワタシが美味しく召し上がろうとおもったのにできなかったノせっかくぶっ殺してぶっ殺して殺し抜いてあげようと思ったのニなんでなんでなのぷちぷち抵抗できないおでん種ぶっ殺したかったのニワタシのガンでガンで黒光りなんかしちゃったりなんかしちゃってるガンでよすぎて死なせてたぼれってあげようとしたノニあまりのすごさに死んじゃうんだからガンはでもユタを馬鹿にしたらやっぱりぶっ殺すノなにげにぶっ殺すノ動く的ネ動く的じゃないとやる気起きないし射殺るって言うか射殺いいよネ素敵よネでねやっぱりもずくもサイコーネ!ソースうどんもいいケドもずく酢にはかなわないネああんワタシは生きてるヒモ無しバンジー」
と、この様にまるで要領をえない回答が返って来るだけで、ただただ面食らうばかりであります。
いったいこの国の官憲はなにやってんでしょうか。
こうしてヤンキーは今、僕の隣でもずくをもりもり食らっているわけなのですが、おふくろ様はお加減如何でありましょうか? おふくろさま、どうかどうか風邪などひかぬようご自愛下さいませ。
潤はまだまだ死ぬつもりはありませぬ。