暗殺〜深山雪見〜


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「ひぃぃっ!殺さないで!!」
恐らくはこのゲームを企てたほうの人間だろう。何故こんなところにいるのかは分からない。
進行状況の諜報、あるいは何かのイレギュラー。
考えられることはいくつかあった。だが、それは今の彼女には関係ない。

どの道下っ端なのだろう。
アホ面かまして歩いてた所を背後から忍び寄り、押さえつける。
そして男の腰から、備え付けられたサバイバルナイフを一気に引き抜き、首筋に当てがう。
男はどうしようもないほど取り乱していた。無理もない。
いきなり背後からナイフをつきつけられては為す術もない。
「答えなさい……参加者に、川名みさき、上月澪の2名がいたはずよ……
殺したのは誰!?」
「しししし、し、知らないっ!ほ、本当だ!ボクは下っ端だからその辺のことは知らないんだ。
た、頼む、命だけはっ!」
「そう……」
男を押さえつける腕が若干緩む。男は少し身体を弛緩させた。
「でもね、あなたたちはっ……!!」
プシッ!!!
一閃、ナイフを横に凪ぐ。
「がっ!!」
男はヒューヒューという音を立てながら力無く崩れ落ちる。
「なんでみさきなの……なんで澪ちゃんなの…!?」
かすれた声でそれだけをやっと言い放つ。
(あの娘達は、たとえハンデを背負っていても、誰よりも光ってた。
精一杯今を生きてたのにっ!)


ナイフから血を拭い、男の羽織っていた防弾チョッキを剥ぎ取る。
探知レーダーがないかと期待もしたが、そこまでは持たされてはいないようだ。
あったのは先のナイフと防弾チョッキ、そしてライフルだけであった。

ライフルの弾を肩からタスキのように下げると、丸腰の物言わぬ男を一瞥した。
「悪く思わないでね。」

もう後戻りはできない。

無論無差別殺人などする気はなかった。
それではみさきを殺った犯人と一緒になってしまう。
それが彼女に残された最後の理性。

ターゲットは3種類。
この狂ったゲームを企てた連中。
みさき、澪ちゃんの敵。
そして、それを邪魔する…
そう、このゲームに乗った奴らだ。

もう私もこのゲームに乗ってしまったのかもしれない。
…それでもかまわない、親友の、そして可愛い後輩の敵を討つことが今の私のすべてだから。

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