「うっ……あっ……」
新城沙織(049)が、肩口を押さえながら呻く。
「る、瑠璃子ちゃん……どうしてっ……一緒に生き延びようってっ……」
くすくす笑う少女、月島瑠璃子(060)。
「私はね、ジョーカーなんだよ」
そう言いながら、肩口に刺しこんだハサミをぐりぐりかき回す。
「いぎぃ!」
「沙織ちゃんみたいに、すぐ他人と仲良くなろうとする人がいるからね。
監視者が必要でしょ。それが、私なの」
瑠璃子が、勢いよくハサミを引き抜く。沙織は肩を押さえながら転がり、悶えた。
「ううっ……そんなのないよ……そんなのぉ……」
「そうそう。このハサミはね、毒が塗ってあるんだよ。遅効性のやつだから、すぐには死なないけどね。
あと30分くらいかなぁ。でも、死にたくないよね。大丈夫だよ。
誰か一人殺してくれば、お薬をあげる。ちゃんと殺した証拠として、その人の持ってた武器を持ってくるんだよ」
「そ、そんなの無理……」
沙織が、すがるように呻く。
「ナメた事言ってちゃダメだよ」
瑠璃子が、そっと沙織の肩を足で地面に押しつけ、傷口に体重をかける。
「いぎああああああ! やめて! やめてぇ!」
「じゃあ、やってくれる?」
「やります! なんでもやるからぁ! やめてよぉ!」
瑠璃子はにこりと笑い、足をどけた。沙織の頭の側にハサミを落とし、告げる。
「沙織ちゃんの支給品、白いCDだよね。いい機会だから教えてあげるけど、
これは同じものを4枚集めて初めて意味があるんだって。ミサイルを止める事ができるそうだよ。
これは秘密なんだけど、どうせ沙織ちゃんはもう生き延びれないから意味ないよね。
じゃ、いってらっしゃい」
「ひく、ひっく……は、はい、いってきます……」
沙織は泣きながらハサミを握り、力無い足取りで歩き出した。
「どうせ、あの毒は一度侵されたら助からないんだけどね。私は中和してあげるだけ。
でも仕方ないよね。ゲームなんだから」
そう一人ごちて、瑠璃子はくすくす笑った。