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覚悟


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闇。
深い闇。
高く高く聳え立った木々は空を覆い隠し、
今が昼間なのかどうかもわからない。
とにかく、ここは暗い。
―――まるで、この島に連れて来られた人達の心のよう・・・・・・
足を止め、天野美汐(005)は想い耽る。
なんで、こんな事になってしまったのか。
自分はこれから、どうすればいいのか。

そんな呟きも闇に吸い込まれ、答えが戻ってくることは無かった。

美汐は歩きつづける事にした。
足を止めたら、後ろから襲われそうで。
怖い。
怖い怖い怖い怖い。
だから、止まらなかった。止まれなかった。
「真琴・・・相沢さん・・・・・・」
口を突いて出るのは、懐かしい人達の名前。
だけど、その名を口にしたのは間違いだったかもしれない。
涙が溢れ出て、止まらない。
視界がぼやける。
いけない、こんな時に誰か現れたら・・・・・・
袖口で目を擦る。
それでも、涙は止まらない。
遂に美汐は、力無く地面にへたり込んでしまった。

恐怖。
孤独。
それから逃げるためなら・・・・・・
(死んだって・・・・・・いいのかも)
目を閉じる。
物音。
(これで・・・楽になれる)
安堵。

「・・・・・・ぴこ?」
(・・・・・・?)
だが、聞こえてきたのは変な声。
薄く、目を開ける。
白い・・・毛玉のような犬?が、美汐を見上げていた。
「・・・どうしたの?何処から来たの?」
笑みを浮かべ、美汐は優しく語り掛ける。
「ぴこぴこ☆」
如何な美汐と言えども、分かるわけも無かった。
美汐はこの妙な犬の頭を撫でる。
犬は気持ちよさそうに、目を細めた。
しかし、そこで美汐の思考は中断される。
物音。
今度は大きい・・・恐らくは、人。
「・・・お逃げ」
美汐は犬から手を放し、逃がそうとする。
死ぬのは自分だけで、十分。
何も、何の罪も無いこの犬を巻き込むわけにはいかない。
「・・・ぴこ?」
だが、犬はその場を動こうとしない。
「・・・お逃げったら」
必死で逃がそうとする美汐だったが、犬は一向に動こうとしない。
そうこうしているうちに、茂みの奥から一人の人物が姿を現した。
「…どうしたんですか?」
優しい笑みを称えたその少年は、長瀬祐介(064)だった。

聞けば、何でもこの犬(ぴこ、と名づけたらしい)は飼い主と逸れたらしく、
犬は飼い主を探すため、そして長瀬さんは知り合いを探すためにこの犬の鼻を利用しているつもり・・・らしい。
「それで、天野さんも知り合いを探している、と」
「・・・はい」
それを聞き、祐介は笑顔で言った。
「それなら、僕たちと一緒に行こう。一人より二人、二人より三人の方が安全な筈だ」
三人?と美汐が聞くと、祐介はぴこを指差した。どうやら数に入っているらしい。
「・・・・・・でも」
美汐が重く口を開く。
「ん?」
「貴方も・・・・・・殺すんでしょう?」
美汐のその質問に、祐介の動きが止まる。
暫く思案するが、やがて語り出した。
「・・・そうだね。僕はそんなにお人好しじゃない。生きる為には、殺さなきゃならない。
だから僕は、殺さなきゃいけないと思ったときには迷わず、殺すよ。苦しませずに」
淡々と、途切れ途切れながらも祐介は語る。
「それに・・・殺しつづけていけば、奴らに眼をつけてもらえば、もしかしたら叔父さんに会えるかもしれない。
・・・どうやら、このゲームには、僕の叔父さん達が絡んでるみたいなんだ。
叔父さん達に会えれば、もしかしたら説得出来るかもしれない。
もし出来なくても、叔父さん達に近づけるなら、それは絶好のチャンスになる。
・・・殺さなければ、この島じゃ道は開けない。・・・だから僕は、殺すよ。」
美汐は、祐介の覚悟に返す言葉を持たなかった。
どう答えれば良いのかも分からなかった。なので、
「・・・なら、どうしてわたしを殺さないのですか?」
こんな言葉ぐらいしか、出てこなかった。

祐介はう〜ん、と困った様に頭をぼりぼりと掻いて答える。
「・・・そう、だね。君が・・・僕の知っている女の子にちょっとだけ似ていたから・・・かな?
無口で、ちょっと不思議な雰囲気で・・・・・・」
そこまで言って、祐介は顔を真っ赤に染める。
「・・・ふふっ」
思わず、美汐の口からも笑いがこぼれる。
それは、この島に来てから、初めての笑み。
「・・・あ〜、笑わないでよ、恥ずかしいな」
そっぽを向いて祐介が言った。
「好きなんですね、その人のこと」
「・・・・・・」
残念だが、祐介にはそれを否定できなかった。
「・・・分かりました。なら、わたしも覚悟を・・・決めることにします」
そう言うと美汐は、バッグの中の配給品をごそごそと漁る。
中から出てきたのは、デリンジャー。
「長瀬さん、貴方に協力させてもらいます」
祐介は真剣な目で美汐を見つめる。
「・・・辛いよ?・・・いいのかい?」
美汐もまた、祐介を見つめ、言った。
「殺せば・・・道が開けるのでしょう?なら、手を汚すのは私達だけでいいでしょう」
決意の篭ったその眼差しに、祐介もそれを了解するしかなかった。
「・・・それじゃ行こうか」
よっ、と祐介がその場を立つ。
ぴこがその後に続く。
一呼吸置いて、
「・・・はい」
美汐も続いた。
(真琴や相沢さんが助かるのなら・・・私が汚れ役になっても・・・構わない)
強い決意を込め、美汐は一歩を踏み出した。

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