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 美凪が物陰から出てきた時、すでにはるかは胸を押さえて倒れていた。
「河島さん……」
「失敗、しちゃったみたい」
 溢れ出す血を手ですくいながら、はるかがにっこり笑った。
「運動神経、自信あったんだけどな」
 口の端から零れる血を舌で舐めながら、言う。
「すみません、河島さん……私は、自分だけ……」
「気にすることないよ」
 はるかは、温度を失い始めた手で美凪の手をとった。
「私はもうダメみたいだけど、頑張ってね」
「何か……何か、できる事は無いんでしょうか」
「ん」
 はるかが、自分の胸元をはだけた。
「傷口、けっこう痛いんだ。舐めてくれたら、痛くなくなるかも」
 瞳が、だんだんと透明な黒へと変わっていく。
 美凪は、無言で頷いて、はるかの胸元に舌をつけた。そっと、なぜるように舐める。
「ん」
 はるかが、静かに目を閉じた。その表情は、眠る赤子のように穏やかだった。
「……痛くなくなってきたよ」
 美凪の手を握っていたはるかの手が、力無くほどけ、地に落ちる。
「河島、さん?」
 美凪は、そっと手を握り直しながら声をかけた。

 だが、その穏やかな寝顔が崩れる事は、もう、無かった。

 (026) 河島はるか 死亡
 残り 81人

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