まさか民間人が、戦闘のプロに向かって
白兵戦をうって出るとは思わなかったのだろう。
晴香の大胆な行動に、兵士たちが浮き足立つ。
「ぐあっ!」
「ぎゃっ!」
不用意に立ち上がった二人が、まず、智子の銃弾の餌食になる。
「ぐはっ!」
そしてもう一人、晴香の白刃の露となる。
「ちっ!」
残った兵士が、晴香に対して銃で牽制しながら逃げていく。
「待ちなさい!」
…その先には、あかりが身を潜めている防風林があった。
突然の人の気配に、体をすくめる。
「…誰?」
…晴香さんだろうか。それとも保科さんだろうか、それとも…
ガササッ!
「ひっ!」
果たして、そこに現れたのは、銃を構えたいかつい「男」だった。
「いやぁぁぁぁぁっ!」
対峙する、晴香たちと兵士。
その兵士の腕には、
「ううぅ…いやぁ……やだぁ…」
言葉にならないうめき声をあげながら、もがいているあかりの姿があった。
「これ以上近づけば、この女は殺す!」
…最悪の展開だ。これではうかつに手が出せない。
それに、いまのあかりの不安定な心に、
乱暴な「男」という存在は、とてつもないダメージを与えかねない。
晴香も、智子も、身動きがとれなかった。
しかし。その緊張を破るものは突然現れた。
「あかりさんをいじめる人は、ゆるしません!」
そんな台詞のわりにはノンキな声が、あさっての方から聞こえた。
「とうりゃ〜っ」
ひでぶりゃ!
もんどりうって倒れる兵士。
…晴香と智子は、目の前の出来事にしばし言葉を失った。