結界


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「たしかこっちです、南さん。」
「魔法の力ってすごいわね、私は何も感じないわ。」

リアンと牧村南は人目を避けながら結界の拠点である社を目指していた。
社さえ壊せば魔力が戻る、そうすればいくらでも脱出方法は考えられる。

「ところでリアンちゃん、あなたのほかに魔法を使える人っているのかしら?」
「えっと、スフィーっていう私の姉さんと、牧部なつみさんは使えます
後こっちの世界の人間もごくまれに魔法を使える人がいるようです。」
「そういえば最初に全員が集められたときに魔法使いっぽい格好をした子が
いたわね、マントに三角帽子の子。コスプレかしら?」
「あの人は魔法が使えるはずです、魔力を感じました。…あ、そろそろ社に
着きますよ。」

この強い結界の力は社のすぐ近くにまで来ているという事だろう、もうすぐだ。

「ちょっと待ってください、南さん。」

リアンは南を小声で制した、向かう先に人がいたのだ、しかも二人。
敵意を持つ人とは出来るだけ接したくない、相手に敵意がなければよいのだが
何しろ一人は竹槍を持っている、危険かもしれない。しばらく様子を見よう。
二人はどうやら同じ社に向かっているようだった。
ところで何で二人とも防空頭巾をかぶっているのだろう?

「舞、こっちでいいの?」
「大丈夫、悲しそうな力を感じる。」
「ふえ〜、舞はすごいですね〜。」

二人の声はどうやら友人同士の会話のものだった、防空頭巾を少し脱いでいる
女の子はのんきそうな声をあげているがそれはもう片方の女の子を信用しているためだろう。
ただもう一人はわからない、魔力を感じるので結界を感じているのだろうが手作りらしい武器
を持っているという事はやる気になっていると言う事かもしれない。
もしかして、のんきそうな声はもう一人の緊張をほぐそうとしてのことなのかもしれない。
それにしても場違いなほどのんきな声だ。
そしてここにものんきそうな声の主がいた。

「リアンちゃん、あの二人は大丈夫よ、向かうところも一緒みたいだし
協力してくれる人は多い方がいいんじゃないかしら?」
「!南さん、いつの間に。」
「いいじゃないですかそんな事、あの〜、ちょっとよろしいですか?」

後ろに待たせていたはずの南は気付かないうちにリアンを追い越して
二人に声をかけていた

「ほんとの魔女さんに会えるなんて佐祐理感激です。」
「…まほうつかいさん。」

二人の名前は 川澄舞 と 倉田佐祐理 といった。
結界の力を感じている少女がいたために二人はリアンが魔法使いであると言う事も
割とあっさり納得してくれた、やはりこの少女は魔法使いの資質があるらしい。

「魔法使いさんはほうきにのってお空を飛べるんですか。」
「見てみたい。」
「私も聞きたかったの、変身用のステッキはどこにあるの?」
「あの、空を飛ぶのはちょっと今は無理ですし変身は高度な魔法なんで私にはまだ…」

リアンは夢見る少女(?)たちに質問攻めにあっていた、みんなの目が輝いている。

ドンッ!!!

しかし突然の大音響と線香に質問会は中断させられた。

「きゃっ!」
「どうしたの?」
「向うのほうからです、社のほう!」
「また同じ、悲しい力…」

リアンは慌てて走り出した、何が起こったかわからないが急いだほうがよい、直感が告げている。
少し走ると開けた場所に出た、目の前には古びた社があった。そしてその前には。

「姉さんしっかりして!」

三角帽子とマントを身に着けてぐったりしている黒髪の少女と、それをかかえる同じ顔の少女がいた。

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