闇の中の二人
「……おい」
「うぐぅ?」
「いい加減、離れろっての」
「……うぐぅ〜〜」
御堂(089)の服の裾をはっしと掴んだまま、月宮あゆ(061)はふるふると首を振る。
「……ちっ」
「にゃぁ〜」
今は夜。自分の能力に制限がかかってしまうと判断した御堂は、身を潜めて夜を明かす事に決めた。
それに、明らかに荷物になっている目の前のガキを連れてうろちょろするのは賢明でない。
勿論、こんなガキは殺してやっても良かったが、うぐぅうぐぅ怯えるあゆを見て、
御堂は手にかけることは何故か躊躇われた。
「うぐぅうぐぅわめくな。いいか。朝までだ。とりあえず朝までは一緒にいてやる」
こくこくとあゆは頷く。
「ちっ。ヤキがまわっちまったぜ……」
悪態を吐きながら、御堂は怯えるあゆの姿を改めて観察する。
と、背中に背負っているリュックに目が行った。
「……おい、お前。武器をよこせ」
「うぐぅ?」
「その背負ってる鞄だ。その中に武器が入ってるんだろう?」
「うぐぅ……でも……」
煮え切らないあゆに、痺れを切らした御堂はドスの聞いた声で唸る。
「いいからよこせ。……それとも、ここで死にたいか?」
「うぐっ! あわわわわぅぐぅぐぅ……わうぐぅ……!?」
あゆは慌ててリュックを下ろすと、ごそごそと中を漁り始めた。
あゆから差し出したものを受け取ると、御堂はしげしげと眺める。
どうやら、武器の類では無いようだ。
「で、こりゃ何だ?」
「うぐぅ……マイク……」
「まいく?」
「こ、こうやって歌うんだよっ」
と、あゆは御堂の手からマイクを奪い返すと、口元に寄せて歌い出す。
「会いたいあいあいあいあい……♪」
狂ったように髪を振り乱しながら歌うあゆの姿を見て、
御堂はすっとデザートイーグルの銃口をあゆに向けた。
「うぐっ!」
「……もういい。やめろ。そいつはお前が持っていて良い」
「つ、使い方を教えてあげただけなのに……」
「にゃあ〜」
うぐうぐと泣き出したあゆを、ぴろが慰める。
そんな姿を見つつ、御堂は早く夜が明けることを願うばかりだった。