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 マナは途中に何回か小休止を挟みながら歩き続けた。
 一所に留まっているわけにもいかないし、眠るわけにもいかない。
 矢に貫かれた足が、包帯の下でズキズキと痛んでいたが、それでも止まることはできなかった。
(お姉ちゃん、藤井さん、それに佳乃って子……絶対生きててよねっ……死んでたら、蹴り殺してやるんだから……!)
 それでなくても小柄な女子高生である。体力的にはとうに限界を超えていた。
 今、マナを動かしているのはただ邂逅への欲求のみだった。会って……それから……
(……会ってから考えればいっか……)
 歩いて、歩いて、夜が明ける頃、不意に視界が開けた。森を抜けたのだ。
 そこは林道のようなところだった。道を挟んでまた森があり、道は左右に長く続いていて、ここから終わりは見えない。
(また森に入ったんじゃバカよね……取り合えずこの道に沿って……どっちに行こう?)
 マナが左右をキョロキョロと見回すと――そこに人がいた。早朝の日差しに美しい黒髪が映える、杜若きよみ・黒(015)。
 森から出て来た時から既に見つかっていたのだろう。目が合った。
「……あのー」
「消えなさい」
 きよみは忌々しげに吐き捨てた。
「朝っぱらから血の匂いなんて嗅ぎたくないわ。今すぐ視界から消えてくれれば、撃たずに見逃してあげるから」

「……あなた」
「聞こえなかったの? 私は消えろ、と言ったの。日本語、わかるでしょ?」
 そう言って腰に手を当て、睨みつける。
 きよみは背の高い方ではないが、相手がその年頃の平均身長よりかなり低いマナだったため、、相対的に見下ろす格好になっていた。
 悔しいけど、私よりは上手いな、とマナは思った。
「どうせ銃なんて持ってないんでしょ」
「…………」
 きよみがその姿勢のままで固まる。
 実際よりもいくらか長く感じられる数秒が、その状態で経過した。
「持ってるんなら、ろくに構えもしないでペラペラ喋るなんてこと、しないわよね」
「……今すぐ絞め殺したいわ、あなた」
「好きにすれば」
 もし聖が生きていて、この言葉を聞いていたら間違いなく後で注意されていただろう。
 有効な武器を持っていないとは言え、相手の戦闘能力がはっきりしない以上、このように挑発するのは明らかに得策とは言えなかった。
 が、きよみは幸運にも何の能力があるわけでもない一般人の複製身であり、特に戦闘訓練を受けているわけでもない。
 結局、マナに手を出すことはできなかった。できたのは悪態をつくくらいのものである。
「生意気なガキ……」
「そのガキにつまんない嘘、見抜かれたのは誰だったかしらね」
「黙りなさいよ、チビっ子」
「……蹴るわよ」
 二人の女の瞳の間で、目に見えない火花が一瞬、散った。

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