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孤影


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「もうっ、やってらんないわよ! 何が『君たちには殺し合いをして
もらう』よっ!!」
 理奈は半泣きで毒づいた。
──冬弥くんの居ない、兄さんも居ないみんな別の場所に運ばれて
しまった……。私一人放り出されてどうすればいいって言うの?──
「殺し合うってどういうことよ……」
 理奈はもう一度、力無く毒づいた。
 彼女、緒方理奈がいるのはスタート地点から程良く離れた所にある
林だった。状況がつかめぬままにとりあえず落ち着けそうなところを
探した結果だった。
「きっと、こんなのどっきりに決まってるわ。由綺や兄さん、それに
私の同窓生から全く知らないエキストラまで人数集めてくれちゃって。
騙そうったって、そうはいかないんだから……。そもそも、どっきり
なんて三流の芸能人が出るもので……」
 理奈はぶつぶつと呟くように言ったが、自分でその言葉を信じては
いなかった。もし、これが現実だったら、どっきりだと思って無防備
でいて、そのまま殺されてしまったら……。
 そんなことは考えたくはなかったが、あり得ぬことでもなかった。
 悲しいほどに今の彼女は無力だった。
 何せ、彼女に与えられた武器は、どう見てもハンディーカラオケの
マイクにしか見えなかったのだから。

「これで相手を魅了して、見逃してもらえというわけ? それとも
何か非科学的なしくみで音波兵器にでもなっているというの?
ちゃんちゃらおかしわよ……」
 これが本当に武器であるというわずかな希望にすがりついても
みたかったが、本当にこれが武器であった場合、下手な取り扱いを
すれば自分にも危害が及ぶかも知れない。
 結局理奈は自分の武器が何であるのかを確認できないでいた。
「私、どうなっちゃうのかな? 兄さん……、冬弥くん……。
 どこにいるの? 会いたい逢いたいよ……。一人はイヤ……」
 理奈は呟きながら、うずくまった。
 体を小さく丸めながら、これが夢であることを願った。
──明日から次のシングルの収録なんだから。これはその緊張で
見てる悪夢に過ぎない。起きたらまた自分の部屋で、兄さんを布団
から引きずり出すように起こして……──
「そうよ、そうに決まってるんだから……」
 理奈は頬をぬらしながら眠りについた。

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