結界・神奈
「ちょっとそこの人達、助けてちょうだい。」
気になる所があるのでついてきてほしいという姉の提案に従いこの社にやって来た
来栖川綾香はこの数分の展開になんとか頭の中を整理しようとした。
姉がやってきたこの社はどうやらいろいろな結界の役目を果たしているらしい、
そこで結界を解くというので自分も魔方陣を書いたり儀式の手伝いをしていたのだが
最後に姉が魔方陣の中に入り呪文を唱えていたところで突然の衝撃が起こったのだった。
本の数瞬の後、彼女の目に移ったのは石畳の床ごと破壊された魔方陣とその中に倒れている
自分の姉 来栖川芹香 だった。わけもわからず気を失っている自分の姉の怪我を確かめる、
外傷はないのでひとまずほっとしたが今度は突然目の前に四人もの人か現れたのだ。
(思わず助けを求めたんだけど正解だったかな?)
なにせ四人のうち二人は防空頭巾をかぶっているしそのうち一人は竹やりまでもっていたのだ
そしてもう一人の防空頭巾は
「あれ?倉田さん?」
「あ〜綾香さんだったんですね〜。」
よかった、この子は信頼できる。財界の(面白くもない)パーティーで退屈をしてぶらぶら
していたときに偶然であったこの子はじつは倉田財閥の娘だったのだ。自分と同じように
こんな堅苦しい席は苦手であったと言う彼女とはすぐに打ち解けその後も時々連絡を取り合っていた。
くだらないデスゲームの中でも平常心を失わない所を見ると顔に似合わず意思の強い女性であったらしい。
「そちらは以前お話頂いたお姉さまですか?」
「そうなの、この場所にあるって言う結界を解こうとしたらこんな事になって。」
「あらあら、大変ですね。ちょっと見せてもらえます?」
「え?」
「私、牧村南と言います。イベントで色々具合が悪くなった人達を見ているので多少は
看護が出来ます。」
攻撃的な人達ではなかったので綾香は安心した。南は色々倒れている芹香の顔色を見たりしていたが
ただ気絶しているだけなので大丈夫だと言った。
そしてこのやり取りがされている間残りの二人は
古びた社をじっと見つめていた。
なんだろう、この社は。全体に古びてはいるが基礎の部分は割と新しい木材で出来ている。
まるでどこか他のところからこの社を移動させてきたようだ。それにこの感じ
「舞さん、これが結界の基盤ですね。」
「はちみつくまさん。」
「?」
同意の言葉なのだろうか、舞は緊張した顔つきにもかかわらずかわいい言葉を返してきた。
結界にはさらに少しヒビが入ってるようだったが自分ともうひとりで壊す事が出来るだろうか。
さっきから悲しい気が充満していることも気になる。
「姉さんなら笑って『大丈夫だよ』っていうだろうけど私には自信ないな。」
「…あわせてあげる、お姉さんに。」
「舞さん?」
「みんなで帰る、そして佐祐理と祐一と一緒にお弁当を食べる。もちろんリアンちゃんや
リアンちゃんのお姉さんも一緒。魔法も見せてもらう、お空を飛びたい。」
「ええ、一緒に帰りましょう。」
少しこの気に圧されて弱気になっていたときに舞の言葉はうれしかった。
「いきます。」
と魔力を引き出そうとしたリアンを突然光の塊が襲った。
「あぶない!」
とっさに舞の体当たりにより力の直撃は避けられたがリアンは光の余波だけで
多少のダメージを追っていた、光は『あの』力と同じ悲しみに満ちていた。
光は徐々になにかの形を取ろうとしていた。
「あなた、誰?」
「…我が……名は……かん…な、…立ち去…れ」
光が作り出す人の形は少女のものだった、翼を持つ少女の。